これが海外であれば、声を上げるか、もしくは、嫌な上司なら、さっさと辞めるというオプションもあるでしょう。
アメリカのある調査では、6割を超える人が「仕事を辞めたい理由」として「上司が嫌いだから」と答えています。
仕事を辞める理由は、「仕事そのもの」ではなく、「上司が嫌だから」というのが最も多いのだそうです。
つまり、「嫌な上司であれば、さっさと辞める」。これが世界の常識なわけですが、雇用流動性の低い日本ではそうもいきません。「パワハラに耐え続けるしかない」とあきらめてしまう人も少なくないわけです。
また、そんなパワハラ上司でも、解雇は難しく、なかなか企業からは排除しにくいという事情もあります。
臨床心理士の村中直人さんは著書『〈叱る依存〉がとまらない』(紀伊國屋書店)の中で、私たち現代人に「叱ることに依存している人」が増えていると指摘しています。
「叱ること」「一方的な説教」は基本、何の効果も生まないにもかかわらず、人は叱りたがるものです。それは、ルール違反を犯した相手に罰を与える体験をすると、脳の報酬系回路が活性化し、強い満足感や快感を得られるからだそうです。
「叱る」という行為で得られる「自分の行為には影響力がある」「自分が行動することで何かよいことが起きる」といった感覚に依存してしまいがちになる。
まさに、「パワーハラスメント」とは、職場における〈叱る依存〉の一形態、もしくはその延長線上であると指摘しています。
パワハラ根絶は「話し方」を刷新することから
とくに現代は、自分にはまったく関係のない芸能人の不倫やスキャンダルに青筋を立て、制裁を加えようと躍起になる人が大勢存在するような「行きすぎた処罰感情」が暴走している時代です。
「叱るは正義」と考える人たちがいまだに多く存在するこの国に、「パワハラの萌芽は無数にある」ということなのです。
「パワハラ根絶」は、法制度を整えるだけで済む話ではありません。「上下関係に縛られないフラットな関係性」と「円滑なコミュニケーション」はパワハラを抑止するばかりではなく、イノベーションや企業変革にも大きな効果を発揮します。
日本企業の風土改革は、まずは一人ひとりが「話し方」をはじめとする「コミュニケーションスタイル」を刷新していくところから始める必要があるでしょう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら