久々の福岡で驚いた「個人タクシー」が目立つ事情 全国の中でも多様な市場、独自路線の新興企業も

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福岡という土地柄は、タクシーという視点で考えると多様な場所だ。全国で約8500台のタクシーを展開する業界最大手の「第一交通グループ」のお膝元でもあり、「MKタクシー」などの大手も進出している。

また、西鉄など電鉄系列のタクシー会社もある。さらに先述したように他の地域では避けられることも珍しくない個人タクシーの勢いも目立つ。そして、中には独自路線をいく新興企業も存在する。

格安が売りの「パンダタクシー」は、2007年よりスタートし、県内で存在感を強めてきた。初乗り価格はなんと驚きの310円だ。

初乗り金額を安く表記し、長距離は割高になる事業者は時折見つけるが、同社の場合は長距離割引も適用される。ホームページによると、例えば、博多駅から小倉駅間で乗車すると通常1万7850円に対し、パンダタクシーは9580円と5割近い料金差があるという。

パンダタクシー
格安が売りの「パンダタクシー」(筆者撮影)

従来の固定観念を覆す抜本的な改革

なぜこれだけの格安が成り立つのか。そこには、歩合制が基本というタクシー業界の従来の固定観念を覆す抜本的な改革があった。代表の青栁竜門さん(46)がこう話す。

「安かろう、悪かろうではなくサービスも重視するためにはどうしたらいいか腐心しました。それで、思いついたのが従業員の給料を固定給にすることでした。タクシー会社に来るクレームは、例えば短距離の際の乗務員の態度がよくない、急ぐため運転が荒い、サービスが悪いといったものが大半です。固定給であれば乗務員さんの心に余裕が生まれ、これらの問題は解決できると考えたんです。

また、料金の安さからもお客様に選ばれるから今では稼働のほぼ9割が迎車で埋まる。そのためドア・ツー・ドアサービスといったサービスも実現できた。もちろん難しい部分もありますが、今後もこの形態で続けていく予定です」

同社の固定給は約26万5000円。夜勤手当がつく場合、30万円に上るという。現在のようなタクシー利用が多くないタイミングなら、乗務員にとってもメリットは大きい。だが、稼ぎたいというドライバーには物足りない部分もあるだろう。

青栁さんがいう難しい部分、というのもこの点だ。これまで取材してきた感覚でいっても、タクシードライバーを職に選ぶ理由は千差万別だが、中には稼ぎたいという人も一定数いるからだ。ただし、安定した収入を得たい、というドライバー達の選択肢として固定給制の会社は希少性が高い。

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