久しぶりに福岡を訪れて驚いたことがある。それは博多駅や空港、天神、中洲など、主要地点にいる個人タクシーの割合の多さだ。とくに博多駅などは、法人タクシーの数を凌駕しているのでは?と思わせるほど、個タクが目立った。
優に30台は超えるタクシーが付け待ちしているが、動きは鈍い。それでも、長距離移動も期待できる博多口のタクシー乗り場にはあまたの個タクが集まっていた。少なくとも筆者がこれまで訪れてきた地域で、付け待ちできる場所でこれだけ個人タクシーの割合が多い地域は記憶にない。
空港から乗車した際も、やはり個人タクシーが目立った。そして、車両は高級車も散見される。
ファミリータイプの大型車を保有する吉田さん(仮名・60代)が、福岡のタクシー事情についてこう明かす。
「個人タクシーをあえて外して乗るという人も多い、というのがこの業界の通説。でも、ほかの地域と比べると、福岡はまだ個タクに対するアレルギーが少ないと思う。その理由は、法人も個人も全体的に運転が荒い面があって大差ない(笑)。『じゃあ、少しでもいい車に』という乗客心理が働くんじゃないかな。そういった面を利用者がよくわかっているから。
空港でも、駅でもそうやけど、夜以外はそんなに長距離はのぞめない。結局、この街は夜が動かないと厳しいね。ただ、福岡のお客様は義理堅い人もいて、一回仲良くなると継続して呼んでくれる人が多い。そういう意味で個タクになるメリットは大きいね」
個人タクシーが多いと感じるワケ
全国個人タクシー協会が発表する2020年のデータによれば、福岡交通圏の個人タクシーの台数は1486台。法人との比率でみれば25.1%と、東京特別区・武三交通圏(東京23区、武蔵野市、三鷹市)、京都地域、新潟交通圏に次ぐ全国4位の水準だ。上位3つを訪れた記憶と比較しても、主要場所に占める個人タクの数は多く感じる。
いったいなぜなのか。福岡県個人タクシー協会の担当者はこう分析する。
「数でいうと福岡の個タクは、必ずしも多いというわけではないと思います。それでも、確かに法人から個人タクシーを目指す人の割合は多いかもしれません。九州男児という言葉に当てはまるように、福岡県人は酒が好きで、先輩が後輩を連れて何軒もハシゴをするという飲み方をする人もいる。そして、飲みの際の移動はタクシーを使う。そのため繁華街の売り上げは必然的に大きくなる。
それがコロナ禍以降、法人タクシーが休業補償を受けるために台数を減らし、補償が小さい個人タクシーの人たちは売り上げが立ちやすい場所に集結しているんです。そんな状態が今も続いています」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら