中国の「FCV保有台数」、2030年に200万台超えも 専門家が予測。普及の糸口は「大型トラック」

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大型トラックは決められたルートを走行することが多く、FCVの普及に向いているとされる。写真は国有トラック大手、東風商用車のFCV大型トラック(同社ウェブサイトより)

「技術の進歩と商用化の加速とともに、中国の燃料電池車(FCV)の生産は大幅な増加が期待できる。2030年には、世界のFCVの保有台数は1000万台を突破し、そのうち中国では200万台を超えるだろう」

中国の工学・科学技術分野の最高研究機関である中国工程院のメンバー(院士)で、上海交通大学の学長を務める林忠欽教授は、9月3日、水素エネルギーの活用に関するフォーラムでそんな予測を示した。

FCVは、中国政府が普及を後押ししている「新エネルギー車」の1つだ。車両に搭載した燃料電池で水素と酸素を化学反応させることで電気エネルギーを作り出し、モーターを駆動して走行する。FCVは二酸化炭素(CO2)を排出しないため、モビリティ分野の「脱炭素」を実現する有力な選択肢の1つとなっている。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、FCV、電気自動車[EV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

ただ、現時点の世界のFCV保有台数は5万台余り、そのうち中国は約1万台にとどまっている。

将来のFCV普及に向けた糸口として期待されているのが大型トラックだ。中国の自動車保有台数は約3億台、そのうち大型トラックは約850万台ほどとされる。冒頭の林教授の試算によれば、大型トラックは自動車の総数のわずか2.6%にもかかわらず、CO2排出量は全体の47%を占めるという。

車両価格と燃料コストが課題

大型トラックを現在のディーゼル車からFCVに置き換えれば、CO2排出の削減効果が大きい。しかも、大型トラックの運用にはFCVを導入しやすい特徴がある。あらかじめ決まった地点間を高頻度で往来し、走行ルートも固定されているケースが多いことだ。これは(FCVの運用に欠かせない)水素ステーションの設置が比較的容易であることを意味する。

とはいえ、FCV大型トラックの商用運行には克服すべき課題も多い。林教授によれば、現時点の最大のネックは車両価格の高さだ。例えば積載量49トンの大型トラックの導入コストは、ディーゼル車なら1台当たり40万元(約812万2520円)ですむのに対し、FCVは3倍以上の150万元(約3045万9450円)に上る。

本記事は「財新」の提供記事です

燃料費の高さも普及の壁になっている。中国国内での水素の価格は、現時点では1キログラム当たり約55元(約1117円)。ディーゼル車の燃料コストに換算すれば2~3倍の水準だ。

これらの課題を乗り越えるには、FCVの技術開発やビジネスモデルにおけるブレークスルーを待たなければならない。

(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は9月3日

財新 Biz&Tech

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