健康診断「異常あり」ワースト1沖縄が抱える問題 元長寿県に起こった問題は対岸の火事ではない
過去の推移を見ると、2009年、2010年の2年間は福井県が最下位だったが、2011年以降は沖縄県が最下位に。その状態が11年続いている。
沖縄県では毎年、恒例行事のようにこの結果を地元メディアがこぞって記事にする。同県でも対策に腰を上げていて、同県労働局は事業所を通じて食生活の改善、運動不足の解消、適正飲食を推進するよう再三、呼びかけているがその効果はおもわしくない。
2021年の沖縄県の検査項目別の有所見率は、血中脂質が42.6%(全国平均33.0%)、血圧が24.9%(同17.8%)、肝機能が24.1%(同16.6%)で、これらの検査項目が特に高い傾向にあった。業種別では製造業(80.6%)、建設業(75.3%)、運輸交通業(74.7%)が高い業種となっている。
同県は観光や運輸などの第3次産業の人口割合が東京に次いで高いことから(2020年国勢調査)、運輸交通業の割合の高さが県全体の有所見率を引っ張っているという、観光産業の盛んな沖縄ならではの事情とも考えられる。
近くのコンビニにも車で行く
では、なぜ沖縄の有所見率が高いのか。その理由を知るには歴史的な背景を紐解く必要がある。
第二次世界大戦の影響が残る1940~1960年代、沖縄県民の栄養状態が悪かった。その後、70年代から80年代以降になると経済状況が良くなったものの、飲酒量の多さが指摘され、食の欧米化によりカロリーや脂質・糖質を摂りすぎる状態となった。
また、公共交通機関の発達が十分でないことにより、近くのコンビニエンスストアに行くにも自動車を使うのが当たり前の車社会で、これが運動不足の原因になっていた。
沖縄県浦添市にある一般社団法人群星沖縄臨床研修センターのセンター長で総合内科医の徳田安春医師は、「沖縄県はまさに、オーバーヌートリション(Overnutrition=過剰栄養)の問題を抱えている。血中脂質や血圧の異常値は、内臓脂肪型肥満や高血圧、高血糖、脂質代謝異常というメタボリックシンドロームの診断基準とも重なる。非アルコール性脂肪肝の原因にもなりうる」と指摘する。
そのうえで、「沖縄県の人に限らず、有所見の人が再検査を受けたり、適切な治療を受けたりするよう誘導するのは非常に難しい。なぜなら人が一度、身につけた生活習慣を見直して、行動変容をさせるのは容易ではないからだ。個人へのインセンティブを与える手もあり、例えば、有所見の人が再検査や治療を受けるなどしたら、公共料金などを無料や割り引いたりするといった行動経済学的なアプローチも有効かもしれない」と、提案する。
沖縄県=長寿のイメージを持つ人も多いだろう。しかし、残念ながら、過去の話となりつつある。