「迫る補助金切れ」好調の軽EVに垂れこめる暗雲 補助金なしでも売れるのか、問われる商品力
補助金の存在が軽EVの好調を後押ししてきた。軽EVに対する国の補助金は最大55万円。日産と三菱自ともに軽EVの価格は最も低いグレードで230万円台に設定されており、補助金を含めると購入価格は2割以上安くなり、価格も200万円を切る。両社は実際に補助金込みの価格を前面に押し出して販促活動を展開してきた。
販売現場は対応に追われている。西日本の三菱系販売会社の担当者は「正直に補助金が切れる可能性を話し、必ず理解を得てから注文の手続きを取るようにしている」という。
首都圏の日産系販社の社長は「補助金については時期によって交付されないことを書面で顧客に確認してもらっている。額が大きいだけに、理解を得ずに進めれば大きなトラブルになりかねない」と話す。
補助金なしでどれだけ売れるのか
メーカー側も注意を促す。日産は「補助金の財源がなくなる可能性があることを顧客に注意するよう、販売店に呼びかけている」。三菱自では、ホームページに補助金が枯渇する可能性がある文面を掲載している。「同意書への署名を条件としている販売会社もある」(三菱自関係者)という。
ただ、「そもそも補助金分を差し引けば100万円台で購入できるということで売っていたが、それができなくなる」(北信越地方の日産販社社長)ことの影響は大きい。軽自動車は、スズキやダイハツといった軽を主戦場とする自動車メーカーが100万円台の価格競争力のあるモデルを多く取りそろえており、登録車に比べて価格が商品力に直結しやすい。
さらに、200万円前後なら、昨年度販売台数1位のホンダN-BOXやコンパクトカーなど各社の人気車種も多い。日産や三菱の販売店からは「補助金枯渇という話が出始めてからは軽EVを求めて来店する顧客も減少傾向」「補助金なしでどれだけ売れるかは正直わからない」との声が漏れる。
日産の一部の販売店からは「これまでも補助金が切れる可能性がある時期はあった。今年度の補正予算か、来年度の予算で補助金の先行きが見えるまで、相談可能な顧客とは買い換えのタイミングを調整したい」との声も聞こえるが、納車スケジュールが見えにくい環境だけに、すべての顧客に対しこうした対応もしにくいのが現状のようだ。