「迫る補助金切れ」好調の軽EVに垂れこめる暗雲 補助金なしでも売れるのか、問われる商品力
「今からの受注分はとてもじゃないが補助金申請に間に合わないだろう」。ある日産系販売会社の担当者はため息をつきながら、そう話した。
「補助金の残高についての問い合わせが増加していることから、下記のとおり、残高・申請受付終了見込み時期をお知らせいたします」
経済産業省が8月以降、ホームページに電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)向け購入補助金の予算残高と終了見込み時期について公表したことで、新車の販売現場が対応に追われている。
9月2日の更新によると、430億円あった予算残高は約126億円。残高が底をつき、受付が終了となる見込み時期は10月中旬〜下旬だという。2021年度は補助金申請の期限である3月まで受け入れていたが、今年はその5カ月以上前に申請を打ち切る可能性がある。
軽EVの好調が要因
自動車業界は現在、半導体不足や新型コロナウイルスの感染拡大による都市封鎖などが重なってサプライチェーンが混乱。メーカーは生産計画通りに新車がつくれず、納車までの期間が長期化している。販売店からは「いま注文しても、納車は来年以降。もちろん補助金の対象にはならない」との声が多く上がる。
例年以上に補助金の活用が進んでいる背景にあるのが、日産自動車と三菱自動車が共同開発し、6月に発売した軽自動車EVだ。
日産が「サクラ」、三菱自が「eKクロスEV」として販売する軽EVは8月末時点で両社ともに計画を上回る合計約3万台を受注。単純に計算すればこの2車種だけで、予算の4割弱を消費することになる。経産省自動車課の担当者は「軽EVの投入で一気に台数が膨らんだ。足もとでも補助金残高の減少が早まっている」と話す。