高速延伸と鉄道衰退に見る「北海道の交通」光と影 高速道路は「縮小する鉄道」の代替となるか?

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北海道には、まだまだ建設途中の高速道路がある。後志(しりべし)自動車道もその1つだ。2022年8月末現在、小樽からニッカウヰスキーで知られる余市まで開通しているが、ニセコ山麓の倶知安(くっちゃん)までの工事が進んでいる。

その先、黒松内(くろまつない)まで開通すれば道央道とつながり、「長万部~室蘭~札幌」間の道央道よりも札幌方面への短絡路となる。

そして、後志道と並行する函館本線の通称「山線」は、2030年度に北海道新幹線が札幌まで延伸されるのと引き換えに廃止が決定。ここでも在来線が廃れ、高速道路が交通の主軸となりそうだ。

旭川から日本最北の駅、稚内へ向かう宗谷本線は、かつては樺太(現、サハリン)連絡のメインルートであり、現在も1日3往復の特急が走る大幹線だが、こちらも名寄(なよろ)以北は存続が困難とされており、地元では活性化推進協議会が作られて議論が続いている。

宗谷本線を走る特急サロベツ
宗谷本線を走る特急サロベツ(写真:STUDIO EST / PIXTA)

この宗谷本線沿いも道央道「比布(ぴっぷ)JCT~士別剣淵(しべつけんぶち)」間、名寄美深(なよろびふか)道路「名寄~美深」間、豊富バイパス「幌延(ほろのべ)~豊富北」間と高規格道路が部分的に開通しており、鉄道が高速道路にとって代わられそうな様相が見て取れる。

災害復旧も鉄道より高速が早いが…

北海道は、札幌近辺を除けば一般道の渋滞も少なく、郊外に出れば高速道路並みに快適な走行ができる道路が少なくない。とはいえ、制限速度は当然内地の一般道と同じだから、安全に高い速度で走れる高速道路は重要だし、自然災害が頻発する昨今、一般道より災害が少ない高速道路網は当然、必要である。

この夏も、豪雨で道央と道東を結ぶ国道274号線の日勝(にっしょう)峠付近が数日通行止めになった折、すぐに復旧した並行する道東道を無料開放して急場をしのいだ。

しかし、鉄道網がズタズタになり、道路だけが広い道内を結ぶ交通手段になる姿に問題がないかといえば、そう簡単ではない。

次ページ高速道路の延伸という「光」、鉄道の衰退という「影」
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