高速延伸と鉄道衰退に見る「北海道の交通」光と影 高速道路は「縮小する鉄道」の代替となるか?

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実際、この日高道を利用した高速バスの路線が定着してきており、ジェイ・アール北海道バスが、「えりも~様似~浦河~静内(新ひだか町)~札幌」間、「十勝側の広尾~浦河~札幌」間、「えりも~浦河~新冠~苫小牧」間をそれぞれ1日1往復しているほか、道南バスの「高速ペガサス号」が「浦河~静内~鵡川~札幌」間を5往復している。

浦河や静内などの日高の拠点都市と札幌間の公共交通機関は、完全に高速バスに移っていると言えよう。

なお、襟裳岬への道東側のアクセスも、幸福駅や愛国駅があって有名になった国鉄広尾線が国鉄分割民営化直前の1987年に早々に廃止され、帯広広尾道が全体の3分の2ほどにあたる忠類大樹ICまで開通している。

留萌への足も鉄道から高速へ

道央の深川から日本海側の留萌へと向かう留萌本線も、並行する区間に高速道路が整備されたこともあって、JR側と地元自治体で存廃についての議論が続けられていたが、2022年8月30日、ついに2段階で廃線となることが決まった。

同線の末端区間であった「留萌~増毛」間はすでに2016年12月に廃止されているが、利用者が少ない「留萌~石狩沼田」間が2023年3月末に、高校生通学者の利用が多い「石狩沼田~深川」間は2026年3月に、沿線自治体が廃止を受け入れたと報じられたのだ。

ドラマのロケ地として観光客も訪れる恵比島駅(沼田町:写真参照)も2023年3月には営業を終了することになる。

連続テレビ小説「すずらん」で明日萌駅として登場した留萌本線の恵比島駅
連続テレビ小説「すずらん」で明日萌駅として登場した留萌本線の恵比島駅(筆者撮影)

一方で、この留萌本線に沿って道央道の深川JCTと留萌間に深川留萌道が2020年に全線開通。留萌から札幌や旭川に高速道路で直行できるようになった。

高速バスも、北海道中央バスの「留萌~札幌」間が1日7往復、道北の豊富町と札幌を留萌経由で結ぶ沿岸バスの特急「はぼろ号」が4往復走っており、こちらも都市間輸送の軸足が完全にバスへと移った形だ。

深川留萌道 留萌幌糠IC付近
深川留萌道 留萌幌糠IC付近(筆者撮影)

鉄道が必要なのは、地域間で通学に利用する高校生や通院などに利用する高齢者がほとんどで、学校や病院の前で停まる路線バスが現在でもそれなりに整備されている区間もあり、鉄道が廃止されてもその影響はかなり小さいようにも見える。

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