「好きなことで稼ぎたい人」がだいたい陥るワナ 好きなことと稼げることは別物という現実

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そして、こうした悩みはいつのまにか、「自分の好きなことを見つけなければならない」という、人生で成功するための「正解探し」のようなものになってしまいます。「好きなことを見つけて自己実現している=成功者」というのが正解で、好きなことが見つからない自分は何か間違っている、という考えにはまってしまうのです。

「いい大学を出て、安定したいい会社に入る」という前時代的な人生の「正解」を今も信じている人は少ないかもしれません。しかし、正解が「自分の好きなことを見つけてそれを仕事にするべき」に置き換わっただけで、構造的には変わっていないのではないでしょうか。

「自分の好きなこと」「得意なこと」「世の中のニーズがあるもの」「お金になるもの」――。これらがすべて重なったものを見つけることが大事だという話を聞きます。しかし、これを実現するのは相当大変で、この4つを得ることが豊かな人生を送る条件だとすれば、それは無理ゲーなのではないかと思ってしまいます。

好きなことに出会わないのは普通なこと

写真家であり探検家でもある、故・星野道夫さんの言葉にこんな一説があります。「短い一生で心魅かれることに多くは出会わない。もし見つけたら大切に……、大切に……」。

そもそも好きなことに出会わないのは普通なことだということを教えてくれる素敵な言葉です。いつどこで出会うかわからないし、出会わないかもしれない。出会った時にそれを大事にしよう。

大西洋単独無着陸飛行にはじめて成功したチャールズ・リンドバーグの妻であり、女性飛行家アン・モロー・リンドバーグの残した言葉も本質を現しています。「人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない」。

私たちは「浪費」や「無駄」を避けたいと思うのですが、浪費こそが、自分らしい人生を見つけるために必要だとリンドバーグは言っています。私たちは、自分が何に夢中になれるのかということを、事前に先見的に知ることができません。夢中というのは、「心の状態」なので理知的に予測することができないからです。だからこそいろいろなところへ行ってみて、そのときの身体的感覚で見極めるしかないのです。

すなわち、「好き」という気持ちは、「見つける」ものではなく、「育む」ものだと思っています。そのためには多くの行動をする必要がありますし、そもそもそんなに簡単に出会えないかもしれない。そのくらいのスタンスや気軽さが大事なのです。

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