「人間のクズ」4度の中退で鬱になった49歳彼の今 学歴がコンプレックスだった男が「就いた仕事」

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親しみやすい漫画や、心惹かれる小説の世界に引き込まれたことで、書字や識字への苦手意識が薄れていったわけだが、どうやら村田さんには過集中の傾向もあったようだ。

「でも、生真面目な両親の理解は得られなくて。父からは『もう本は買わないで』と言われ、母からは『学校へ行かない人間は、人間のクズだ』と言われていました。たしかにクズだろうなと思いながらも、それでも私には、学校へ行く意味がわかりませんでした。理解者と言えば恋人くらいでしたね」

通学の電車の時、村上春樹、ジョン・アーヴィングなどの本で膨らんでいた村田さんのリュックをゴソゴソと漁ると、「これ借りるね」と言っていつも持っていっていたという。なんとも微笑ましいエピソードだが、それだけで学校生活への楔(くさび)になるわけではなかった。高校から足が遠のいた村田少年は、10カ月ほどの不登校期間をはさみつつ、2年生の時に高校を中退することになった。

「中退する時、母は『先生、すみません。この子がすみません』と謝っていました。それぐらい学校という空間に馴染めなかったわけですが、でも、家にも居場所はなくて。むしろ、『中退するようなお前に小遣いなんかやれない。働け!』と両親に言われて、すぐにアルバイトを始めました。

ただ、当時は就職氷河期時代でしたし、中卒の僕に応募できたのはコンビニや排水管清掃、大手パンメーカーの工場でのバイトぐらい。16歳にして、社会ではいかに学歴が大事かを知りました」

単位制高校から、4年制大学への進学

その後、中退者でも受験することができる単位制の学校に合格し、高校に戻った村田さん。幸いにもその高校は「授業がある時間だけ学校に来れば良いというスタイル」だったこともあって肌に合い、無事に卒業。1浪後、4年制の大学に入学した。

これでようやく人生が軌道に乗る……と思いきや、実際に大学生活がスタートしてみると、ここでも日本流の「学び」との相性の悪さが未来を塞いだ。

「必修科目や教養の大事さはわかるんですけど、“教養”なのに押し付けだと感じることが多く、本人が知りたい、必要だと思ったタイミングで学ぶことはできませんでした。テストのタイミングで『習ったことを覚えているか・いないか』という学習方法も、やはり私には合わないと感じました」

興味を持てる分野は楽しく学べるものの、興味も持てない授業はどうしても出席できなかった村田さん。そんなスタンスで単位が足りるはずもなく、5年目に大学を中退することになる。

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