停留所は8000「のらざあ」で実現する「町のDX」 AIオンデマンド交通をきっかけに変わる茅野市
「のらざあ」のような、一般的に「AIオンデマンド交通」と呼ばれるAI(人工知能)を活用した高度な配車サービスは、全国各地で実用化が始まっており、例えば長野県内では塩尻市の「のるーと」や茨城県高萩市の「のるる」などがある。
そうした中で茅野市の試みは、従来の路線バス路線の半数以上を一気にAIオンデマンド交通に転換するというかなり大胆なものだ。その背景について、茅野市企画部DX推進室に詳しく聞いた。話は今から24年前の1998年まで遡るという。
当時の矢崎和広市長が、市民とともに汗をかいて行政政策を考える「パートナーシップのまちづくり」を提唱した。最初は福祉分野から、地域住民や事業者が集まって話し合いを始める。当時、中心的な役割を担ったのは30代から40代の人たちだ。
その後、市長が柳原千代一氏、さらに現在の今井敦氏に代わっても、官民連携の基本方針は変わらず、地域住民が社会変化に対する当事者意識を持つ社会基盤が築かれていった。
そして、1990年代後半に30~40代で茅野市の未来を議論した中心的な世代が、2010年代後半には50~60代に。自らの肌身で地域社会の高齢化を感じ、町から若者が減っていることを実感するなど、町の未来に対する危機感を共有するようになっていた。
移動手段という視点で見ると、茅野市は自家用車での移動比率が高く、路線バスの乗客数は全体としては減少傾向が続き、市の財政的な負担が増加。さらに、高齢者の免許返納や、自分の仕事中にも親の通院や介護のために送迎しなくてはならないなど、移動に関するさまざまな課題が浮彫りになってきていた。
5つの具体的な目標値
こうした各種課題の解決策を含めて、茅野市は2020年4月に「若者に選ばれるまち」をコンセプトとした第2次茅野市地域創生総合戦略を打ち出している。基本目標を5つ掲げ、それぞれで2024年に達成を目指す数値目標を以下のように設定した。
(2)通いたい、帰りたいまちをつくる:将来、茅野市に住みたいと思う15歳から18歳の割合:60%
(3)移り住みたい、住み続けたいまちをつくる:社会増減(転入者数-転出者数)510人(5年累計)
(4)安心して出産・子育てができるまちをつくる:合計特殊出生率1.7
(5)安心・安全、快適なまちをつくる:茅野市の行政サービス全般に対して不満を感じている人の割合0%
これら5つの基本目標を連動させることで、生産年齢人口(15~64歳)の比率を55.8%とする目標を掲げる。
こうした施策の中で、JR茅野市周辺を「コンパクトシティゾーン(仮)」、その周辺を「茅野市住宅地ゾーン(仮)」、さらに八ヶ岳を望む別荘地やリゾート施設が多い地域を「リゾートアクティビティゾーン(仮)」と位置付け、「暮らしやすい未来都市・茅野」の実現を目指す施策の1つとして、新しい地域交通に着手したのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら