停留所は8000「のらざあ」で実現する「町のDX」 AIオンデマンド交通をきっかけに変わる茅野市

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最後に、私見を述べたい。近年、企業のみならず、地方公共団体を含めた「町のDX(デジタルトランスフォーメーション)」に注目が集まっており、都内等で開催されるDX関連イベントを取材すると、イベントの出展者と来場者がかなり多いことに驚く。

筆者はさまざまな会議体に参加して交通のDXについて議論をしており、そうした議論の密度を高めるためにも、今回の茅野市をはじめ全国各地の事例の現場を筆者自らの意思で巡っているが、そうした中で「町のDXとは、時代変化の中で生じた生活の不便さを出来る限り少なくすること」だと実感している。

今回、取材で訪れた「ワークラボ蓼科高原」(筆者撮影)

交通の場合は、DXやデジタル化といっても、高度な自動運転や空飛ぶクルマ、電動キックボードなど、新しい法規制や車両規定をともなう新種の乗り物の導入を前提とした町の施策を進めるべきではない、とも思う。交通は、あくまでも円滑な社会活動を継続的に行うための手段の1つに過ぎないからだ。

そのうえで、町の施策の初期構想段階から社会実装まで、「技術優先」ではなく「人中心の暮らし優先」の視点を地域に関わる人たちが共通認識として持ち続けることが大事であると思う。

2025年「データプラットフォーム」社会実装へ

結果的に地方部では、それまでの生活習慣や自然環境を維持しながら「表向きの地域の姿はこれまでとは大きく変わらない」、または「できるだけ、いまあるものを応用する」という流れになることが多い。それを実現できるのが、「DXの良さ」なのだと思う。

また、交通は社会全体の血液のような存在であり、生活に関わる主な領域を結びつける役割がある。その観点では、デジタル庁が2022年6月7日に公開した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中で、「準公共分野」という考え方を示している。

具体的には、「防災」「健康・医療・介護」「教育」「こども」「インフラ」「港湾(港湾物流分野)」「農林水産業・食関連産業」、そして「モビリティ」の8つの領域を指す。

さらに、これらがスマートシティ(またはスーパーシティ)、取引(受発注・請求・決算)を介して相互に連携するという考え方だ。国は、こうした準公共分野の各種データを包括管理するため、データプラットフォームを2025年までに社会実装することを目指している。

茅野市で見たような、地域住民が当事者意識を持った“新しい町づくり”に対するさまざまな試みが、国が進める「準公共分野のデータプラットフォーム実現」に向けた道を切り開いていくことを、大いに期待したい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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