1999年に逝った男が綴ったサイトが今も残る意味 20年以上無管理「池田貴族心霊研究所」の役割

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2冊めの闘病記となる『ガンを生きる2 愛娘・美夕の誕生』(旧題・誕生)でもサイト運営に言及がある。がんの再発が判明し、手術に向けて準備を進めている1997年8月の記述だ。

<八月十三日。
 インターネット関連の打ち合わせに出かける。
 「池田貴族の心霊研究所」というホームページの主宰・制作・管理を行っているためだ。
 入院中はパソコンを使用できる状態ではないので、フォーラムへの参加、電子メールの送受信など、ユーザーへのサービスが停止する。それについての対応の打ち合わせだ。
 ユーザーには、「十月まで旅に出る」というごまかし方をすることにした。
 そして、スタッフにも、「精密検査のための入院」という言い方ではぐらかした。>
(『ガンを生きる2』/97ページ)

この時点で肝細胞がんであることはメディアを通して公表していたが、再発の事実についてはしばらく伏せていた。このため当時のホームページでのやりとりは、がんの手術をして一命をとりとめた管理人として振る舞っていた節がある。

それから2年が過ぎ、体調の悪化により貴族さん自身での管理が困難になった頃、サイトのトップ画面には移転先のURLが表示されるようになった。新たなドメイン(http://www.kizoku.com ※閉鎖済み)の管理者は出版社のメディアファクトリー。従来の3Dダンジョンふうのサイトデザインや、読者参加型のコンテンツ「心霊フォーラム」「心霊体験談」などの定番コーナーは踏襲しつつ、管理とコンテンツ制作は同社のスタッフが担うようになる。

Internet Archiveに残るメディアファクトリー版「池田貴族心霊研究所」(筆者撮影)

同社は数年前から貴族さんとともにPlayStation向けゲームを制作しており、そのプロモーションを兼ねてサイトを引き継いだかたちだ。ゲームタイトルは『霊刻―池田貴族心霊研究所―』。貴族さんがゲーム構成から盛り込むエピソード、BGMの制作まで関わった作品で、没後の2000年10月にリリースされている。販促ページにはこうある。

<この作品は、本研究所の所長であり、ミュージシャン、心霊研究家と活動を行ってきた故 池田貴族の、最初で最後のプロデュース作品です。
池田貴族は生前、心霊研究家として、テレビなどでのコメンテーターをつとめ、心霊スポットや心霊現象についての著書を執筆してきました。後年、彼の活動の中心は心霊現象に悩む人の相談にのったり、寄せられた心霊写真の除霊を行うことに移っていきます。自ら本サイトである「池田貴族心霊研究所」を立ち上げ、心霊現象に向かい合う人たちのアドバイザーとして、運営を行っていました。
「世の中には、霊能師としての能力も高くないのに、困っている人たちから多額のお金をとっている人たちがたくさんいる。自分は、そういった人々へのアンチテーゼとして、この活動をはじめた。」
本作品および本サイトは、それぞれの心霊現象の意味、除霊・浄霊の過程をきちんと伝えたいという池田貴族の意図に賛同し、株式会社メディアファクトリーが制作して参りました。>
(2000年9月頃の池田貴族心霊研究所/「霊刻」ページ/Internet Archiveより)
次ページ死没からしばらくは読者からの書き込みが続いた
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