1999年に逝った男が綴ったサイトが今も残る意味 20年以上無管理「池田貴族心霊研究所」の役割

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「当時は貴族氏も掲示板に書き込みをされて、ファンと気さくにやり取りをしていました。心霊のことだけでなく普段の生活のことも語られていました。個人的にはミラーサイトの存在も懐かしいしうれしいです」

心霊フォーラムの常連さんとは今も交流があり、ミラーサイトも過去の存在にはなっていない様子だ。しかし一方で、「残念ながら貴族氏の活動の実態はそこにはないと思っています」とも語っている。

池田貴族の本筋はロックミュージシャンであり、近づく死や家族への思いは晩年のソロアルバム『MiYOU』から受け取ることができる。それに、池田貴族の鎧を脱いだ本心は池田貴の筆名で本にしたためている。貴族さんにとって心霊研究家としての活動は1つの支流にすぎない。その支流が偶然にも消滅せずに残っている──。そういうことなのだろう。

初ソロアルバム『MiYOU』。iTunes Storeなどでも購入できる

おかちさんは、remoteのギタリストであるHIROさんともつないでくれた。貴族さんとともにremoteを立ち上げた創立メンバーだ。HIROさんはミラーサイトを「役目を終えた灯台」と表現する。

「その灯台は抜け殻でありながら、いつも目印としてそこにあって、そこからはなんの光も発せられてはこないけれど、逆に必要とする人が光を当てて探し出すような、そんな存在。そしてシンボルとしてそこにあることで、逆に見いだす人を守っているような気もします」

池田貴族心霊研究所は廃墟ではない

本連載『ネットで故人の声を聴け』が書籍化され、光文社新書より刊行されています。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

長らく音楽から離れていたHIROさんは2018年に復帰。2019年にremoteを再始動し、貴族さんの没後20年にかかる追悼イベントを主導した。以後もremoteとして活動を続けており、2023年にリリース予定の「イカ天」オムニバスCDにも参加している。

希有なパフォーマーとしての池田貴族の存在と、remoteの音楽。それをこれからも世に知らしめたい。長く抱いてきたその思いを形にすべく動き出したのだという。

その活動にこそ貴族さんの「実態」の続きがあるのかもしれない。そして、「役目を終えた灯台」はそこにつながる目印ということなのかもしれない。確実にいえるのは、池田貴族心霊研究所は廃墟ではないということだ。

古田 雄介 フリーランスライター

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ふるた ゆうすけ / Yusuke Furuta

1977年生まれ。名古屋工業大学卒業後、建設会社と葬儀会社を経て2002年から雑誌記者に転職。2010年からデジタル遺品や故人のサイトの追跡している。著書に『第2版 デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(伊勢田篤史との共著/日本加除出版)、『ネットで故人の声を聴け』(光文社新書)、『故人サイト』(社会評論社)など。
X:https://x.com/yskfuruta
 

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