「当時は貴族氏も掲示板に書き込みをされて、ファンと気さくにやり取りをしていました。心霊のことだけでなく普段の生活のことも語られていました。個人的にはミラーサイトの存在も懐かしいしうれしいです」
心霊フォーラムの常連さんとは今も交流があり、ミラーサイトも過去の存在にはなっていない様子だ。しかし一方で、「残念ながら貴族氏の活動の実態はそこにはないと思っています」とも語っている。
池田貴族の本筋はロックミュージシャンであり、近づく死や家族への思いは晩年のソロアルバム『MiYOU』から受け取ることができる。それに、池田貴族の鎧を脱いだ本心は池田貴の筆名で本にしたためている。貴族さんにとって心霊研究家としての活動は1つの支流にすぎない。その支流が偶然にも消滅せずに残っている──。そういうことなのだろう。
おかちさんは、remoteのギタリストであるHIROさんともつないでくれた。貴族さんとともにremoteを立ち上げた創立メンバーだ。HIROさんはミラーサイトを「役目を終えた灯台」と表現する。
「その灯台は抜け殻でありながら、いつも目印としてそこにあって、そこからはなんの光も発せられてはこないけれど、逆に必要とする人が光を当てて探し出すような、そんな存在。そしてシンボルとしてそこにあることで、逆に見いだす人を守っているような気もします」
池田貴族心霊研究所は廃墟ではない
長らく音楽から離れていたHIROさんは2018年に復帰。2019年にremoteを再始動し、貴族さんの没後20年にかかる追悼イベントを主導した。以後もremoteとして活動を続けており、2023年にリリース予定の「イカ天」オムニバスCDにも参加している。
希有なパフォーマーとしての池田貴族の存在と、remoteの音楽。それをこれからも世に知らしめたい。長く抱いてきたその思いを形にすべく動き出したのだという。
その活動にこそ貴族さんの「実態」の続きがあるのかもしれない。そして、「役目を終えた灯台」はそこにつながる目印ということなのかもしれない。確実にいえるのは、池田貴族心霊研究所は廃墟ではないということだ。
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