森永卓郎さんが明かす「相続は地獄の作業だった」 糖尿病にライザップ、今農業と実は波乱な半生

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それと今、農業にはまっている。

借りた畑を今年から60坪に倍増して、25種類の野菜を育成中。本来、野菜はあまり好きではなかったが、自分で育てた野菜は別格だ。

怖いので農薬も一切使ってない。自然とヘルシーな食生活になったし、野菜はすべて畑からの収穫でお金も使わず、食費も劇的に下がった。周りでも同じようなことをやっている人が10人くらいいて、物々交換みたいな感じで野菜をもらえる。隣のおじさんなんて、じねんじょを作ったりして、すごく技術力が高いですよ。

私は健康のためにも、農業をお勧めする。無農薬だから手間もかかり、毎朝5時に起きて畑に通わねばならず、土を耕している。給水設備がないので20㌔㌘のポリタンクを持ち上げて運ぶ。もう土木工事みたいな感じ。

スポーツジム以上の運動量をこなし、健康を維持できている。コロナ禍でテレビ出演や講演が減った分を、農業への情熱で補っている。

家族に残していく物は断捨離したほうがよい

━━同世代に向けて、相続で何かメッセージはありますか。

相続だけの問題じゃないが、大変なのが、家の中にたまった物をどう処分するか。家庭でだんなさんが集めてきた物を捨てられず、奥さんに「捨てなさい」と言われていたところ、このコロナ禍で、私のところに「何とか引き取ってくれ」と電話が鳴りっぱなしでかかってきた。全国から引き取った段ボール箱は300箱くらいだが、もう入らず、すでに紙関係は受け入れを停止している。

父も残した本がすごくあり、神田神保町(東京)に持って行って売ろうかと思っているが、それでも手間がかかる。本ならまだいいが、一般的に遺品整理業者などに頼むと、逆に何十万円も取られてしまう。

私自身、体重を“断捨離”したのに続き、お金や不動産は別としても、家族に残していく物は、断捨離していかなければと考えている。生きているうちに少しずつ処分するのがいちばん。大学の研究室にある山積みの書籍を、5年くらいかけて整理しようと考えているし、家でもスペースが空くので家族も助かる。

結局、本人には価値があるが、金銭的価値がないようなものは、生前に家族と話し合っておくのがいい。遺品となってしまっては、場所をふさいでいても、家族は捨てづらいから。これも立派な相続対策になると思う。

━━これだけはやり残さずにやりたい、ということがあったら、教えてください。

いつまで仕事をできるかわからないが、もう決めたのは、嫌なことはやめて、楽しいことだけをやろうということ。農業もそう。テレビよりもラジオのほうが言いたい放題だし、今はラジオで民放3局のレギュラーを持っていて、本当に楽しいです。

加藤 光彦 ライター

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かとう みつひこ / Mitsuhiko Kato

慶應義塾大学卒業後、女性誌を経て、東洋経済新報社に入社。編集局でゲームや電力業界を担当、その後ビジネスプロモーション局へ異動。現在は会社四季報執筆等に従事。

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