贈与非課税110万円をなくすのは政治的に難しい キーマンの宮沢洋一・税制調査会長が明かす

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自民党の宮沢洋一・税制調査会長は税制改革を取りまとめるキーマンだ(撮影:尾形文繁)
年末に向けてこれから議論が進む、2023年度(令和5年度)の「税制改正大綱」。決定権を握る国会議員に向けて、あらゆる業界団体が陳情を繰り返す様子は、もはや毎年の風物詩である。
相続税や贈与税などの資産課税も、影響は大きく、近年注目されている。何と言っても、年間110万円まで非課税の「暦年贈与」が維持されるのかは、大きな焦点だ。ほかにも、株式市場を揺るがせた「金融所得課税」の引き上げ、消費税の「インボイス」(適格請求書)導入など、注目されるテーマは多い。
話し合いの場となる自民党の税制調査会でキーマンなのが、会長を務める宮沢洋一・参議院議員である。大蔵省(現財務省)出身で、伯父は宮澤喜一・元首相。かつ選挙区は岸田文雄首相と同じ広島県で、所属は宏池会(岸田派)。いや応なしに注目が集まっている。
果たして宮沢氏は今、何を語るのか。8月8日発売の『週刊東洋経済』では「変わる相続」を特集。宮沢氏への直撃インタビューから、最高裁で否認されたマンション節税の実態、生前贈与でできる「節税額」シミュレーションまで、幅広く取り上げた。

相続加算の期間を延長することはありうる

――2022年度改正では相続税と贈与税の一体化について「本格的な検討」とありました。今の資産課税にはどんな問題がありますか。

『週刊東洋経済』2022年8/13-8/20号(8月8日月曜発売)では「変わる相続」を特集。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

まず相続税の最高税率55%以上で高額な財産を持つ人は、亡くなる3年前より前に暦年贈与で生前贈与を繰り返せば、税額を少なくできるという問題が1つ。またもう1つ、贈与税の税率が高いため、老年から若年へ世代間の資産移転が進んでいない、という問題もある。これらについて考えないといけない。

――暦年課税の基礎控除(非課税枠)110万円を廃止・縮小する考えはありますか。贈与の相続加算3年間を、アメリカのように過去の期間すべて、あるいはドイツやフランスのように10~15間年へ延長する可能性は。

世代間の資産移転を促進する観点などから、暦年課税の110万円を縮小する必要はないと個人的に思う。正直、なくすのは、政治的にも難しい。ただし、相続加算の期間をさらに延ばしていくことは、議論の対象になりうるだろう。といって、アメリカのように過去の贈与をすべて加算するのは、書類の保存など税の現場からすると現実的でない。期間については今後の話だ。

――一方、暦年課税に比べて、相続時精算課税のほうはあまり利用されていません。

相続時精算課税の特別控除(非課税枠)は2500万円まであるが、(その贈与を利用せず)日本ではまだキャッシュで持っている人が多い。オレオレ詐欺などで何千万円とだまし取られているということは……。国税当局も国民の所得・資産を把握し切れていない。まず税の公平感や格差是正を実現するためにも、納税者番号制度などを使って、しっかり把握する仕組みが大事だと思う。

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