贈与非課税110万円をなくすのは政治的に難しい キーマンの宮沢洋一・税制調査会長が明かす
相続加算の期間を延長することはありうる
――2022年度改正では相続税と贈与税の一体化について「本格的な検討」とありました。今の資産課税にはどんな問題がありますか。
まず相続税の最高税率55%以上で高額な財産を持つ人は、亡くなる3年前より前に暦年贈与で生前贈与を繰り返せば、税額を少なくできるという問題が1つ。またもう1つ、贈与税の税率が高いため、老年から若年へ世代間の資産移転が進んでいない、という問題もある。これらについて考えないといけない。
――暦年課税の基礎控除(非課税枠)110万円を廃止・縮小する考えはありますか。贈与の相続加算3年間を、アメリカのように過去の期間すべて、あるいはドイツやフランスのように10~15間年へ延長する可能性は。
世代間の資産移転を促進する観点などから、暦年課税の110万円を縮小する必要はないと個人的に思う。正直、なくすのは、政治的にも難しい。ただし、相続加算の期間をさらに延ばしていくことは、議論の対象になりうるだろう。といって、アメリカのように過去の贈与をすべて加算するのは、書類の保存など税の現場からすると現実的でない。期間については今後の話だ。
――一方、暦年課税に比べて、相続時精算課税のほうはあまり利用されていません。
相続時精算課税の特別控除(非課税枠)は2500万円まであるが、(その贈与を利用せず)日本ではまだキャッシュで持っている人が多い。オレオレ詐欺などで何千万円とだまし取られているということは……。国税当局も国民の所得・資産を把握し切れていない。まず税の公平感や格差是正を実現するためにも、納税者番号制度などを使って、しっかり把握する仕組みが大事だと思う。
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