森永卓郎さんが明かす「相続は地獄の作業だった」 糖尿病にライザップ、今農業と実は波乱な半生

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亡き父の預金を探すため、全国を回り、やっと見つけたと思ったら残高は700円・・・・・・。森永さんは相続からさまざまな教訓を得た(写真提供:森永卓郎)
物価は上がれど、賃金は上がらない━━。ベストセラー『年収300万円時代を生き抜く経済学』で知られる森永卓郎さん(65)は、そんな先の見えない時代を斬り、テレビ出演や執筆、講演活動を精力的にこなしている。
経済アナリストで獨協大学教授でもある森永さんは、父の遺産相続で、実は“地獄の作業“を余儀なくされたという。時は2011年、東日本大震災の直後。そのときの教訓や反省は何か。親からの相続、逆に子どもへの相続で留意すべき点は何か。さらには、今や農業にも励むなど意外にもアクティブな日常を踏まえ、人生後半戦に向けてのライフスタイルのバージョンアップについても語ってもらった。
8月8日発売の『週刊東洋経済』8月13日‐20日合併号では「変わる相続」を特集。森永さんへのインタビューをはじめ、生前贈与のQ&A、相続税と贈与税の”一体化”シナリオ、さらに相続登記のやり方など、幅広く取り上げている。

やっと探しあてた父の銀行口座は残高700円

――相続に関しては大変な苦労をされたようですね。

2011年に父が亡くなり、最も困ったのは、資産や負債のリストが皆無だったこと。たぶん母(2000年死亡)がみな管理をしていたのだろう。

『週刊東洋経済』2022年8/13-8/20合併号(8月8日月曜発売)では「変わる相続」を特集。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

私も油断していた。父が銀行に貸金庫を借りていたので、預金通帳などはすべて貸金庫に入っているものと思い込んでいたのだ。貸金庫を開けてみたら、大学の卒業証書や記念硬貨しか入っていなかった。仕方がないので、父宛に届く郵便物を仕分けし、金融機関から届いた手紙も全部調べ、どこに口座があるか見当をつけて聞きに行く、地道な作業を続けた。

――それで最終的にはすべて判明したのですか。
 残念ながら、ネット銀行・ネット証券の口座は、郵便物が来ないのでわからなかった。それ以上に不明だったのが借金。手掛かりすらなく、これはある意味で恐怖だった。噂では、悪徳金融業者は借金を放棄できない相続後10カ月のタイミングで「払え」と言ってくる、という話を聞いていたので……。結局、誰も来なかったので、借金はなかったと結論付けた。

――郵便物から判明した口座は、無事、手続きを進められましたか。

口座を見る際、父が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本をすべて取ってくるよう、銀行から要求された。「すべての戸籍を確認しないとお父さんに愛人や隠し子がいるかもしれないから」という言い分だ。父は新聞記者で全国各地に赴任していたからそろえるのは大変。東日本大震災直後で私の仕事にキャンセルが相次いだが、そうでなければ、相続税の納付期限の10カ月後に間に合わなかっただろう。

ある区役所は空襲で焼けて戸籍謄本が残っていなかった。銀行にその旨を伝えたら、「消失した証明書を出してもらって」と言われ、それを区役所にお願いしたら、「そんなものは普段出してない」と。やっと、区役所から特別に証明書を作成してもらい、銀行に提出した。またある銀行では、苦労して口座残高を開示してもらったものの、残高が700円(笑)。さすがに頭にきて放棄した。

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