小切手が最も普及している国が、クレジットカードを発明し、ペイパルやアップルペイを生み出し、フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)の暗号通貨プロジェクト、リブラ(現ディエム)を考え出した国であるというのは皮肉な話だ。
小切手全体の4分の3がアメリカで切られており、ほかのどの国もまったく及んでいない(次点はフランスで、全体の10%を占めている)。
小切手の意外なメリット
経済理論によれば、人々が支払い方法を選ぶときの基準になるのは、自分にとってのその方法の有用性──メリットからデメリットやコストを差し引いたもの──であるという。そして小切手にもいくつかの利点があると主張することができるかもしれない。
小切手が決済されるまでには数日かかるので、その間は口座に資金を残しておける。さらに、小切手を郵送したり、受け取り手が現金化するのに時間を要したりする場合には、さらに長い間資金を保有することができる。そして、支払いが遅れるときのお決まりの言い訳、「小切手はいま郵送中なんです」が使える。
受け取り手にとってのメリットは少ないかもしれないが、資金の到着に時間がかかるとしても(さらに、小切手が不渡りにならないかは、小切手の発行者が資金を十分にもっているかどうかに左右されるとしても)、資金を手にすることは期待できる。
見過ごされることの多いもう1つの利点としては、小切手では「ファットフィンガー」(太い指)エラー、すなわち支払い手が金額や通貨を間違えて入力するというミスが起きにくい。これは意外とよくあることなのだ。そして心強いことに、私たちのような凡人に限った話ではない。
2020年の半ば、シティバンクは、顧客に、顧客が受け取るべき金額の100倍を誤って送金するという9億ドルあまりのミスを犯した。2018年、同じことがドイツ銀行の不幸な行員に起こり、350億ドルが誤送金された。この金額は、同行の時価総額を50億ドルも上回るものだった。