ロシア企業が初の「人民元建て社債」発行の背景 アルミ大手ルサール、総額782億円を国内で完売

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ロシア国内では西側諸国の金融制裁を背景に、人民元および人民元建て資産に対する投資家の注目が高まっている(写真は人民元建て社債を発行したルサールのウェブサイトより)

ロシアのアルミ大手のルサールは7月29日、ロシア国内では初めての2本の人民元建て社債を発行し、それらをモスクワ証券取引所に上場したと発表した。社債は2本とも発行価額20億元(約391億円)、表面利率3.9%、償還期限5年で、投資家は2年後からプットオプション(繰り上げ償還の権利)を行使できる。

財新記者が入手した資料によれば、2本の人民元建て社債のうち1本は募集口数に対して4倍の応募があった。もう1本にも募集口数を上回る応募が集まって完売し、投資家の人気の高さが浮き彫りになった。

ルサールの社債発行の主幹事を務めたガスプロム銀行は、2本の人民元建て社債はすべてロシア国内の投資家が購入したと明らかにした。総額40億元(約782億元)の投資家の内訳は、銀行が67%、個人投資家が25%、資産運用会社が6%、投資会社と保険会社がそれぞれ1%だった。

ロシア国内に積み上がる人民元

ロシアでは今、人民元および人民元建て資産への注目が日増しに高まっている。ルサールの人民元建て社債のほかにも、例えばインドのセメント大手のウルトラテック・セメントが、ロシア石炭大手のSUEKから人民元建てで 1億7270万人民元(約34億円)分の石炭を購入した事例などが報じられている。

背景には、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに西側諸国が発動した金融制裁がある。それを回避するため、ロシア国内の投資家はドルやユーロ(による投資や決済)の代替手段として人民元の利用を模索中なのだ。

「ロシアから中国への輸出は、(受け取り通貨の)相当部分がドルまたはユーロ建てから人民元建てに切り替わりつつある。その一方で、ロシアへの輸出を手がける中国企業は従来の商慣習を理由に人民元建てへの切り替えを渋っており、現在も取引の大部分がドル建てだ」

本記事は「財新」の提供記事です

財新記者の取材に対し、ガスプロム銀行は実態をそう解説した。このようなアンバランスから、ロシア国内には中国への還流ルートがない人民元が積み上がる一方となっている。

それを有効活用する手段として、ロシア国内に(ルサールの人民元建て社債のような)独自の人民元建て債券投資市場が誕生した格好だ。

(財新 駐香港記者:王小青)
※原文の配信は8月2日

財新 Biz&Tech

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