ライフハックで効率上げるとますます忙しくなる 「すべてをこなそう」という誘惑に打ち勝つ

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忙しいこと自体は、悪いことではない。1960年代にアメリカで大人気になった絵本の舞台「ビジータウン」は、活気あふれる楽しそうな街だ。雑貨屋のネコや消防隊のブタは、たしかに忙しく働いている。ビジータウンに怠け者はいない(もしもいたとしたら、きっと中央当局によって注意深く隠されているのだろう)。

僕たちの現実と違うのは、彼らが無理をしていないことだ。ネコもブタも機嫌よく、落ち着いて仕事をこなしている。やるべきことはたくさんあるけれど、「期限までに終わらせなければ」というストレスはない。仕事がきちんと時間内に収まるという自信に満ちているのだ。

それにくらべて僕たちは、つねに不安と焦燥に駆られている。どうやっても終わらない量の仕事を抱え、途方にくれている。

調査によると、こういう感覚は、どんな経済的な階層にも等しく見られるらしい。子どもたちを食わせるために最低賃金の仕事を2つ掛け持ちしている人は、当然忙しすぎてクタクタに疲れきっている。

勝ち組もプレッシャーにさらされている

一方で、お金がある人も、それはそれでまったく余裕がない。多額の住宅ローンを抱えて毎月返済しなければならないし、仕事は(給料はいいとしても)忙しすぎて家族とゆっくり過ごせない。気候変動に関する社会運動にも参加したいけれど、そんな時間はどこにもない。

イェール大学のダニエル・マルコヴィッツが言うように、成果主義の世の中では、たとえ勝ち組であっても(つまり、エリート大学を卒業して超高給で働いている人も)、終わることのない強烈なプレッシャーにさらされつづける。誰もがうらやむ地位を手に入れても、そのポジションを維持するために、さらに死ぬほど努力しなくてはならない。もう無理だと感じるのも当然だ。

なぜなら、厳密に論理的にいって、無理なのだから。自分ができるよりも多くのことをやらなければならない。そんなの不可能に決まっている。

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