ライフハックで効率上げるとますます忙しくなる 「すべてをこなそう」という誘惑に打ち勝つ
問題は、正しい時間管理術を見つけていないとか、努力が足りないとか、もっと早起きすべきとか、自分がダメ人間だとかいうことではない。そうではなく、根本的な前提がまちがっているのだ。
1日に詰め込めるタスクの量を増やしたからといって、すべてをコントロールできている感覚なんか得られないし、重要なことを全部やるだけの時間も生まれない。そもそも、何が重要かというのは主観にすぎない。自分や上司にとって重要なことが、時間内に実行可能だと考える根拠はどこにもないわけだ。
ライフハックを駆使しても時間は余らない
さらに、どんなタスクも、時間があればあるだけ勝手にふくらんでいくものなのだ。正確には「やるべきこと」の定義がどんどん広がっていくといってもいい。
こういう皮肉な傾向の典型例が、20世紀に発明された恐るべき道具、電子メールだ。あなたはメールの返信が早い人として有名になり、みんな急ぎの用事をどんどん送ってくるようになる(逆に、メールの返信をサボりがちな人は、時間を節約できることが多い。返信しないでいるうちに別の解決策が見つかったり、なんだかんだで放っておいてもうまくいったりするからだ)。
メールの処理は単に終わらないプロセスであるだけでなく、メールを処理することでメールがさらに増えるという悪循環を生む。これがいわゆる「効率化の罠」だ。どんなに高性能な生産性ツールを取り入れても、どんなにライフハックを駆使しても、時間はけっして余らない。
それでも、選択肢はある。
「もっと効率的にやれば忙しさから逃れられる」という希望を、あえて捨てればいいのだ。
どんなに効率的にやっても、忙しさは終わらない。その事実を理解していれば、いつか平穏な日々がやってくるのではないかという非現実的な期待を持たなくてすむ。理想的な未来を待ちわびるかわりに、今の生活に平穏を見いだすことができる。たとえやることが大量にあってもだ。
何もかも諦めたくないという願いを捨てて、タフな選択に向き合ったとき、よりよい選択をすることが可能になる。やるべきことはいつだって多すぎるし、これから先もそれはきっと変わらない。そのなかで心の自由を得るための唯一の道は、「全部できる」という幻想を手放して、ひと握りの重要なことだけに集中することだ。
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