いきなり!ステーキはなぜここまで凋落したのか 大勝から大敗へ、創業者の一瀬邦夫氏が社長辞任

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いきなり!ステーキ
ハレの日に食べるステーキを日常にした(撮影:梅谷秀司)

それまで高級ステーキというものは特別な日に誰かと一緒に食べるものでした。ところがいきなりステーキの登場はその「高級ステーキを」「日常的に」「おひとりさまが」食べるという新需要を創造しました。

一瀬氏が狙った低価格戦略も顧客に刺さります。当時の価格ではリブロースが1g=6円(当時の税別表記、以下同じ)、サーロインが1g=7円、ヒレが1g=9円という価格設定で、これはファミレスの中でも高価格高品質を売りにするロイヤルホストのアンガスビーフのサーロインステーキがグラム単価10円超だったのと比較しても非常に魅力的な価格設定でした。

2015年頃になるとブームが定着し、都内50店舗を超えたいきなりステーキではランチタイムに長蛇の行列ができるようになりました。そこからフランチャイズ方式で店舗数は全国に急拡大します。

時には行列がみられるほどの盛況ぶりでした(撮影:梅谷秀司)

ステーキ専門店の急拡大に必要な料理人の確保についても、たとえば調理経験者を再雇用し、ステーキを焼くというスキルにフォーカスして再教育するといった形で、当時、店舗運営の観点でもビジネスモデルに隙はないように見えました。

立ち食いという競合他社にない運営形態から顧客回転率は非常に高く、2018年には品川シーサイドフォレスト店が一日に1734食を提供して「レストランにて24時間で販売されたビーフステーキ最多食数」のギネスブック認定の世界記録を打ち立てます。

リピーターがブームを支える

当時、ブームを支えたのがリピーターです。この時期、いきなりステーキがヒットしたもうひとつの背景としてダイエットで一世を風靡したライザップが巻き起こしたロカボダイエットブームがありました。

ライザップに入会してダイエットに成功した人がわずか2カ月でメタボ体型から筋肉質のスリムな体型へと激変する秘密は綿密なパーソナルトレーニングプログラムに加えて、炭水化物を制限しおもに肉などのタンパク質を中心の食事をとるロカボダイエットの食事プログラムにありました。

ロカボダイエットはライザップに加入しない人の間でも知識が広まります。このやり方で取り戻した若者体型をキープするためには、肉食中心の生活を続ける必要があります。そのために付随的にヒット商品になったのがコンビニのサラダチキン(鶏むね肉)と「いきなりステーキ」だったというわけです。

そしていきなりステーキの場合、リピーターの確保施策として機能したのが肉マイレージ制度でした。累積で食べたステーキの量が3kgを超えるとゴールド会員、20kgを超えるとダイヤモンド会員、そして100kgを超えるとプラチナ会員と認定され、それぞれ特典を得ることができるようになります。

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