いきなり!ステーキはなぜここまで凋落したのか 大勝から大敗へ、創業者の一瀬邦夫氏が社長辞任

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
これまでにない低価格を武器に打ち出しました(撮影:梅谷秀司)

創業時には本物のステーキ肉しか使わないことが売りだったのですが、限定メニューとしてインジェクション加工肉(霜降り加工肉)を提供することも行われました。このあたりの味の変化に気づいた人が少なくなかったのはリピーター層が多かったからかもしれません。そして実はこのリピーター戦略の誤算が、出店過剰以上にいきなりステーキの傷口を広げたという見方があります。

2018年の既存店売り上げ減少、2019年の赤字転落という逆風の中、ペッパーフードサービスはいきなりステーキ事業の立て直しのためにさまざまな手を打つのですが、その中でも転落を決定づけたのではないかと言われるのが「肉マイレージ制度」の改悪です。

累積グラム数によるランクアップ制度を廃止

2020年12月にいきなりステーキは肉マイレージについてそれまでの累積グラム数によるランクアップ制度を廃止して、半年間の来店回数に応じてランクが決まる新制度へと変更しました。

これによってそれまで上級会員だった層からふたつの不満の声が起きます。ひとつはそれまでは一度ハードルをクリアしたらずっとランクアップされた状態がキープされていたものが、新制度ではランク降格が起きるようになるという不満です。そしてもうひとつ、地味に反対の声が強かったのが累積グラム数制度がなくなることで「チャレンジ感がなくなる」という不満でした。

要するに自分のいきなりステーキ愛を示す累積グラム数という目標がなくなることで、リピーター層のモチベーションが大きく下がってしまったのです。後者の不満を救済するため改悪後わずか半年でプラチナとダイヤモンドについて累積グラム制度を復活させる再改定に踏み切らざるをえなくなりました。

さてこの肉マイレージ制度の改悪ですが、実はその問題点は開業当時に遡ります。業績が悪化して大きく問題となったのは、要するに制度設計当初に設計ミスがあったのです。それは比較的到達しやすいゴールド会員の特典がお得すぎたことにありました。

当初からの肉マイレージ制度では累積グラム数が3kgに達すると誰でもゴールド会員になり、生涯ゴールド会員資格を得ることができました。いきなりステーキはリブロース、サーロインともにステーキの販売量は300gからなので、ほとんどの顧客は10回通えばゴールド会員になります。

次ページゴールド会員の特典がお得すぎた
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事