公立なのに学校ごとの「学力格差」広がる根本理由 「学力が高い=いい学校」と思う人に欠けた視点

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学校の机
ペアレントクラシー化が進む社会の実相と、新自由主義的色合いを強める教育現場の実態をご紹介します(写真:SoutaBank/PIXTA)
“親ガチャ”というネットスラングに象徴されるように、日本は親の影響力が強い社会となりつつあり、生まれた家庭によって大きな格差が生じるようになっている。親の経済力と子どもの学力の相関関係は年々高まり、教育の場が階層固定の装置となる懸念も生じている。大阪大学大学院教授で、教育社会学を専門とする志水宏吉氏の著書『ペアレントクラシー 「親格差時代」の衝撃』より、ペアレントクラシー(親の影響力が強い社会)化が進む社会の実相と、新自由主義的色合いを強める教育現場の実態を紹介する。
前回:『「親の力で人生が決まる」日本の決定的な転換点

苦労してはいあがっても逆転できない

筆者の知り合いのお子さんのケースを紹介しよう。その知り合いというのは北陸のある県の教育関係者であり、配偶者も高校教員である。端的に言うと、両親が教師で、一人っ子であるそのお子さんは、現役で東京大学に進み、卒業後は文部科学省に入省した。

筆者も東京大学教育学部出身ということもあり、そのファミリーと食事をともにすることがあった。そこで彼女は、次のように語ってくれた。

「最近は志水先生がおっしゃるような『苦学生』的な教育学部生はほとんどいませんよ。みんな明るく、余裕をもって入学してきた仲間が多いですよ」と。彼女自身が、まさにそうなのである。明るく、素直で、賢明で、親思い。どこにも文句のつけようがない人である。

私が大学を受験したのは、40年以上も前のことである。私は運よく現役で合格したが、一浪はおろか二浪、三浪もふつうに存在した。当時の現役合格率は45%ほどであったと記憶する(現役合格がうれしかった私は、鮮明にその数値を覚えている)。

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