高い平均点をとる学校を「いい学校」、低い平均点しかとれない学校を「わるい学校」ととらえる見方は正当ではないことを、ここで強調しておきたい。
なぜならば、学力テストの点数には、大ざっぱに言って「家庭の力」と「学校の力」が関与しているのであり、少なくとも教育社会学の視点から言うなら、高い平均点に主に寄与するのは「家庭の力」だと考えることができるからである。
極端に言うなら、学歴が高く、専門職についている保護者の比率の高い学校では、教師がさぼっていても子どもたちは高い点数をとるのである。それを「いい学校」と形容するのは、果たして正しいだろうか。
逆に、「しんどい」家庭の多い学校では、教師が子どもたちの学力を懸命に下支えしようとしても功を奏さないことも多く、平均点は低迷しがちになる。それを「わるい学校」と評価するのはフェアではない。
「絵に描いた餅」になりかねない「多様な選択肢」
ペアレントクラシーの基本となる考え方は、「子どものために少しでもよい教育を与えたい」という親心にある。それに応えるために学校教育システムを再構築することが必要だということである。子ども・保護者の多種多様なニーズに応えるために、さまざまなタイプの教育機関を設け、選択肢を増やすことが試みられている。
しかし現実には、その試みの恩恵を受けることができるのは、主として先述の著書のなかで「教育を選ぶ人」と名づけた、一部の人たちである。より多数からなる「教育を受ける人」たちにとっては、選択の自由の尊重を掲げる教育システムは、品ぞろえは豊富だが、高いものしか置いていない、高級デパートのようなものである。
さらに、貧困層や外国籍の人たちといった人々は、つねに「教育を受けられない人」に転落するリスクをかかえている。彼らにとって、多様な選択肢は絵に描いた餅にすぎない。
そうした状況のもとで、高校や大学のみならず、小学校や中学校までもがタテ方向に序列化する傾向、すなわち「いい学校」と「わるい学校」に分極化して把握される傾向が強まっている。ゆゆしき事態だと言わざるをえない。
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