わかりやすく言うなら、小中学生の間に、学力の「ふたこぶラクダ化」とでも呼ぶべき事態が進行していることが明らかになったのである。それ以前の段階ではおおむね「ひとこぶ」だった子どもたちの学力分布が、「できる層」と「できない層」に分極化する傾向が見られはじめたのである。そしてその「ふたこぶ」は、子どもたちの家庭背景と強く関連していた。
すなわち、「できる層」は豊かで安定した家庭生活を送っている層と、「できない層」は家庭生活にさまざまな課題をかかえている層と大きくオーバーラップしていたのである。この状態は今日の公立小中学校では常態化しており、「できない層」をどう支えるかという課題が各校の共通した懸案事項となっている。
学校自体の格差が拡大
学力格差の実態を把握し、その改善・解決の方向性を探ろうと試みてきた筆者があるとき思いついたのは、格差が顕在化しているのは1人ひとりの子どもたちだけではなく、彼らが学ぶ学校自体の格差が拡大し、二極化が進んでいるのではないかという疑問であった。
勉強の「できる層」と「できない層」の二極分化を追いかけていたら、できる子が集まる「評判がいい学校」とできない子が集まる「評判がわるい学校」への二極分化が目に入ってきたということである。
多少の地域差はあるものの、小中学校については、「できる子」が行く「私学」、ふつうの子が行く「公立」という色分けはこれまでもあった。それが、公立学校のなかでも分極化が進行しはじめたのである。
それに実質的に拍車をかけたのが、2000年の品川区以来、2000年代に各地で広がった「学校選択制」の導入であった。文部科学省の調査によれば、2006年には全国のほぼ14%の自治体が何らかの学校選択制を採用することになった。もっともそれ以降、学校選択制の導入にはブレーキがかかり、今日では見直しの動きが広がっているようだ。
いずれにしても、2007年からはじまった全国学力・学習状況調査が定着した今日、その得点分布を見ると、ほとんどすべての自治体で高得点をとる学校とそうではない学校に分極化する傾向が見られる。そしてそれぞれの学校の得点は、学校が立地する地域の、あるいはその学校を選択する親たちの社会経済的地位に大きく規定されるものとなっているのである。
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