「日産リーフ」より「テスラ」がEVの主役になった訳 イノベーションなんて誰も使いたがらない理由

拡大
縮小

内田:それはおっしゃるとおりです。牧さんの本で紹介されている論文にも、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の普及でスタートアップのハードルが下がったとありました。以前は自社サイトをつくろうとすると、それなりの金がかかったけれど、AWSを利用すれば、個人でも簡単につくれる。スタートアップの初期費用は10億円から1億円に下がっていると。

さらに、消費者の態度変容や行動変容を促すのも、昔は資金力のある大企業が有利でしたが、今はスタートアップでも簡単にできます。その意味で、加速化していると思います。

:ようやく話がかみ合ってきましたね(笑)。

イノベーションを阻害する3つのバイアス

:イノベーション・ストリームの図では、行動変容と態度変容を分けているのですね。

内田:ここはすごく議論しました。一緒でよいとか、順番が逆ではないかとか。実際に、先に行動が変わって、後から態度が変わるケースもあると思います。

しかし、たとえば、皆さんが飲食店に行くときに、食べログを見てスコアを確かめてから行く。私からすれば、素人が評価したものに頼るなんておかしいと思いますが、それがまさに皆さんの態度であり、行動に結びついている。そこはきちんと説明したほうがよいだろうと。

:行動変容とイノベーションはアカデミアでも議論されています。イノベーションの普及を阻害するバイアスが3つあります。

1つ目が損失回避バイアスです。新たに得られる便益よりも、失うもののほうが人はつらい。2つ目が授かり効果で、まだ所有していないものよりも、今所有しているもののほうが高い価値があるとみんな錯覚して、新しいものに移らない。

次ページイノベーションなんて誰も使いたくない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT