ブルーマウンテン、不味いと思う人に伝えたい真実 本当は美味なのに流通や販売の打ち出し方に問題

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さらに、重さで量る生産国ばかりではありません。ボックスやファネガスのように体積で表示する生産国があります。またその数字がコーヒーチェリーなのか、パーチメントなのか、生豆なのかによっても数字が大きく変わります。しかも「遠く日本から来てくれた人の質問には、知らなくても答えてあげよう」と考えるような、サービス精神が旺盛な人がいます。

ですから本を読んでいると、思わず吹き出してしまうような間違いが書かれています。

繰り返しになりますが、産地名や農園、銘柄を盲目的に信じるのも危険です。どんな素晴らしい農園でも、収穫したコーヒーすべてが最高級ではありません。選別の精度によって価格も品質も変わってきます。もっと厳密に言えば、いつ収穫したかによって1本の木でも品質の差は出てきます。

日本のコーヒー流通システムの1つに、有名自家焙煎店グループの共同購入があります。著名な焙煎店が主催し、傘下の店を束ねて共同で買い付けをするというものです。傘下にはかつて修業した門下生や主催するコーヒー教室の卒業生が多いのですが、このようなグループの中にはサステイナブルではないケースも見受けられました。

いったんこのグループに入ると、ほかから生豆を買ってはいけないという縛りが発生します。もっと自由に生豆を選びたいと掟を破った店は、仲間から外されてしまうようなことが現実にあったそうです。

以前プロ向けにコーヒーのセミナーを開催していた時期がありましたが、「受講していることを秘密にしてほしい」とか「外に分からないように生豆を買えないか」と聞かれたことが何回かあり、巷で言われていることは本当なのだと実感しました。

ブルーマウンテン神話が崩れた理由

また、品評会ものとしてよく挙がるCOE(カップ・オブ・エクセレンス)の豆については、最新年度の「ニュークロップ」でない古い豆を売っているケースもあるので要注意です。グループで購入した高い受賞豆を割り振られ在庫を抱えてしまったという話をよく耳にしました。

ブルーマウンテンコーヒーの神話が崩れてしまったのも、流通や販売の打ち出し方に問題があったからです。

ブルーマウンテンとハワイコナだけは、昔から国際相場とは関係なく値が決まり「グルメコーヒー」と呼ばれていました。2008年にリーマンショックが起こり、もともと高価だったブルーマウンテンは世の不況で売れなくなりました。

それまでブルーマウンテンは黙っていても売れる人気銘柄で、全生産量の90%以上を日本が輸入していましたから、大量の在庫が倉庫に積まれました。その後少しずつ経済がよくなると、そのコーヒーが製品化され市場に出回りましたが、それは4~5年も倉庫に眠っていた劣化したブルーマウンテンです。

サードウェーブの時流に乗った若い人たちがそれを飲んでも、当然「ほかのシングルオリジンに比べておいしくないな」となります。それでブルーマウンテンは高いだけのたいしておいしくもないコーヒーと思われてしまい、ブルーマウンテン神話は崩壊しました。

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