ブルーマウンテン、不味いと思う人に伝えたい真実 本当は美味なのに流通や販売の打ち出し方に問題
この国のコーヒー文化は、多種多様な抽出方法や、極めた焙煎技術などが相まって、世界的にも誇れる歴史を歩んでいます。しかしながら嗜好品としての文化の成熟は、まだまだこれからだと私は思っています。
デイリーな一杯から特別な日に淹れる「とっておきのコーヒー」までの明確な品質のピラミッドができ、海の向こうの生産者から個々のコーヒー店、初心者をも含めた愛飲する皆さんまで、関わる人たちそれぞれにきちんと敬意が持たれて文化的で品格のある趣味になってこそ、それは完成するのかもしれません。
自分自身の「おいしい」という基準を作る
そのためにまず必要なのは、自分がおいしいと思ったコーヒーを素直に「おいしい」と言える市場になることでしょう。何でも「最高級豆使用」と称したり、マニアック感に酔いたいがために安易に「このコーヒーにはかすかなピーチの風味が……」などと論じたりするのも、私はあまり感心しません。
これはたとえ話ですが、若いときに飲んだお酒は、案外、今飲むとおいしくなかったりするものです。自分の舌が年相応に肥えたのでしょう。また、違う土地、違う店で飲めば、楽しみもまた違います。
自分自身の「おいしい」という基準をまず作り、そのハードルを少しずつ上げていく。個人の内面での話になりますが、それを許容できる社会にしたいと考えます。誰もが最初は初心者ですし、最初はあまり味などわからないもの。とはいえわれわれコーヒー屋はあまり味の見解や良し悪しを押しつけず、お客さんに任せればいいと思います。
店がすべきは指導ではなく、手札をたくさん見せてあげること。つまり、多種多様なおいしいコーヒーがあると伝えることでしょう。
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