「小児かかりつけ医制度(かかりつけの医療機関を登録しておくと、その医療機関が子どもの急な病気の際の診療や慢性疾患の指導管理などをしてくれる制度)」を利用し、かかりつけ医として登録していても受診できないというケースもあった。
東京都在住のCさんは、子どもが夕方激しい嘔吐を突然したため、かかりつけ医に電話し相談したものの、「予約でいっぱいなので、ほかの病院を受診してください」と言われてしまった。ママ友らと協力し、ほかの病院を当たり受診し胃腸炎と診断された。「かかりつけ医に登録した意味はあるのか……」と、そのときの不安な気持ちとともにそう吐露した。
このほかにも、「16時診察予約のところ19時過ぎに診てもらえた」「これまで予約なしでも受け入れていた病院も予約制へ切り替えた」「診察券のない新規患者の受け入れは停止した」などの例も聞かれ、小児科がかなり混乱していることがうかがえる。
さまざまな感染症の”総攻撃”を受けている
独立行政法人国立病院機構三重病院(津市)院長で、小児科学・感染症学の専門家の谷口清州医師は、小児科に患者が殺到している主な原因を4つ挙げる。
1つ目は、コロナの感染増加だ。厚生労働省によると直近1週間の感染者は、20代が最も多く、次に10代、40代と30代の子育て世代、続いて10代未満が多くなっている。「ウイルスは賢く、免疫のないところをかいくぐって入り込むため、第7波はワクチンを打っておらず、これまでにあまり罹患していない子どもの感染も増えている」(谷口医師)と言う。
2つ目に、コロナに加えRSウイルス、エンテロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザなど、さまざまな感染症の”総攻撃”を受けていると指摘する。
「この2年間マスクを着け、人と人との接触を避けて、感染症の対策をしていた。本来であればその季節や年ごとにかかるべき感染症にかかってこなかった。今年になり、急に接触が増え、マスクを外して生活をするようになったため、感染伝播が始まった」(谷口医師)
前出の藤本医師も「コロナだけでなく、さまざまな感染症のあらゆる可能性を考えて丁寧に診察するため、かなり神経を使う」と言い、その分、診療に時間がかかる。
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