東大教授が教える「頭のいい人」が実践する会話術 コミュニケーションで誤解が生まれる原因を分析
ところが断られた相手が「M=V」だと思い込んでいると、相手の言葉をそのまま素直に信じ、「落ち着いた頃にまた声をかけてみよう」とポジティブに解釈してしまいます。こういうタイプにはなかなか建前が通じないため、また懲りずにお願いしてやんわりと断られて……を繰り返す可能性もあります。一方、「疑い力」が強い人は、「M=V」より「M≠V」の可能性を考えます。
そして、「忙しいのはみんな同じ。断られるということは嫌がられてるのかもしれない」と相手の本音を読み取り、潔く引き下がることができるのです。それが、次のパターンです。
言葉の裏に隠された本音を察する
④「I≠M≠V=I」
話し手は真意と違うメッセージを発し、聞き手はメッセージを疑って真意を見抜いている場合
ここでは、上方落語から生まれた有名な逸話「京都のぶぶ漬け(お茶漬け)」の例を紹介しましょう。京都の人は、早く帰ってほしい客人に対し、「何もお構いするものはありません」という意味(真意)を含めて、「ぶぶ漬けはいかがどすか?」とすすめます。何も知らない人は、「ありがとうございます」と素直に答えてしまいます。
「疑い力」がある人は、「お客にお茶漬けをすすめるなんておかしいな」「早く帰ってほしいんだな」と、言われたことをそのまま受け取らず、「疑い力」を使って相手の真意を読み取ります。
そして、「お茶漬けは結構です。そろそろ失礼します」などと丁寧に断って、そそくさと帰るのです。つまり、話し手と聞き手の曲がったメッセージのやりとりだけで、お互いの真意が理解できるというわけです。
このように、言葉の裏に隠された本音を察することで、コミュニケーションが上手く成立することは、日常の場面でもありませんか? 人間には、「本音」と「建前」があります。相手が発した言葉が「本音」なのか「建前」なのか、いったん「疑い力」を使って考え、冷静に判断してから返事をすることは、コミュニケーションの基本なのです。
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