東大教授が教える「頭のいい人」が実践する会話術 コミュニケーションで誤解が生まれる原因を分析

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ところが断られた相手が「M=V」だと思い込んでいると、相手の言葉をそのまま素直に信じ、「落ち着いた頃にまた声をかけてみよう」とポジティブに解釈してしまいます。こういうタイプにはなかなか建前が通じないため、また懲りずにお願いしてやんわりと断られて……を繰り返す可能性もあります。一方、「疑い力」が強い人は、「M=V」より「M≠V」の可能性を考えます。

そして、「忙しいのはみんな同じ。断られるということは嫌がられてるのかもしれない」と相手の本音を読み取り、潔く引き下がることができるのです。それが、次のパターンです。

言葉の裏に隠された本音を察する

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より

④「I≠M≠V=I」
話し手は真意と違うメッセージを発し、聞き手はメッセージを疑って真意を見抜いている場合

ここでは、上方落語から生まれた有名な逸話「京都のぶぶ漬け(お茶漬け)」の例を紹介しましょう。京都の人は、早く帰ってほしい客人に対し、「何もお構いするものはありません」という意味(真意)を含めて、「ぶぶ漬けはいかがどすか?」とすすめます。何も知らない人は、「ありがとうございます」と素直に答えてしまいます。

東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣
『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』(あさ出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「疑い力」がある人は、「お客にお茶漬けをすすめるなんておかしいな」「早く帰ってほしいんだな」と、言われたことをそのまま受け取らず、「疑い力」を使って相手の真意を読み取ります。

そして、「お茶漬けは結構です。そろそろ失礼します」などと丁寧に断って、そそくさと帰るのです。つまり、話し手と聞き手の曲がったメッセージのやりとりだけで、お互いの真意が理解できるというわけです。

このように、言葉の裏に隠された本音を察することで、コミュニケーションが上手く成立することは、日常の場面でもありませんか? 人間には、「本音」と「建前」があります。相手が発した言葉が「本音」なのか「建前」なのか、いったん「疑い力」を使って考え、冷静に判断してから返事をすることは、コミュニケーションの基本なのです。

『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』より
西成 活裕 東京大学先端科学技術研究センター教授

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にしなり かつひろ / Katsuhiro Nishinari

専門は数理物理学、渋滞学。1967年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業、同大大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。その後、ドイツのケルン大学理論物理学研究所などを経て現在に至る。予備校講師のアルバイトをしていた経験から「わかりやすく教えること」を得意とし、中高生から主婦まで幅広い層に数学や物理を教えており、小学生に微積分の概念を理解してもらったこともある。著書『渋滞学』(新潮社)で、講談社科学出版賞などを受賞。ほかに『とんでもなく役に立つ数学』『とんでもなくおもしろい仕事に役立つ数学』(KADOKAWA)、『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』(あさ出版)など、著書多数。

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