陸くんはむしろ友達と遊ぶのは大好きだった。そのため、予約の取れていた別の先生の意見も聞いてみようと、他の2つの病院も受診してみることにした。
2番目に訪れたB病院では、ストレスによる「うつ」だと言われた。受験で強いストレスがかかっているため、前頭葉が疲弊して、自律神経が乱されて咳が起こるということだった。処方されたのは自律神経を整える薬。投薬を初めてみると、確かに、回復が見られた。
その頃、A病院での検査の順番が回ってきた。検査では知能検査も行われた。俗に言う、IQ値を図るテストだ。結果、陸くんはIQが130を超えるギフテッドであることがわかったのだ。
その後、これまでの経過と検査結果を携えて、やっと順番の回ってきたC病院を訪れると、「息子さんはギフテッドであり、不注意が強い傾向のADHD」だと診断された。
ADHDと言うと、多動症などが思い浮かぶが、症状は子どもによりさまざまだ。陸くんの場合は多動傾向は見られず、注意欠如が出るタイプだった。
「普通のお子さんと本当に変わりなく過ごしていて、ちょっと手のかかる男の子くらいの程度に思っていました。まさか、ADHDだとは思いもよらなかったのですが、言われてみれば、納得できる部分が多くありました」(母親の小百合さん)
入試直前期にやってきた感情の起伏
症状を緩和する薬を飲み始めると、陸くんの体調は落ち着きはじめ、学校にも行けるようになりはじめた。
忘れ物をする回数も激減し、机に脚をぶつけることもなくなった。そして、テストでよく見られていたうっかりミスも減ったというのだ。
成績も上がりはじめた頃、受験の正念場、小6の冬がやってきた。それまで、特に行きたい学校もなかった陸くんが「ぼく、〇〇中に行きたい」と言い始めた。早慶の付属校だ。
「それまで、塾の面談ではずっと国公立を中心に話していました。今から私立の付属校狙いに切り替えて間に合うのかが不安でした」(母親の小百合さん)
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