塾の担当講師に話をすると、むしろ、陸くんには問題の傾向が合っているという返事をもらい、急遽、付属校の受験を決めた。
だが、ここからさらに山がやってくる。過去問を解き始めた陸くんの様子がおかしいのだ。
「なんでこんな問題ができないんだ!なんでだ、なんでだ!!!」
叫びながら何度も自分の足を叩く陸くん。合格点に届いていても、100点が取れないことを激しく悔しがるようになった。そして、入試直前にもこの爆発は起こった。
「中学受験、やめよう」の一言に大爆発
「大丈夫だよ」
と声をかけるしかない小百合さん。しかし、小百合さんの心も折れてしまった。
「こんなになるなら、中学受験、やめよう……」
思わず口にした言葉に陸くんはさらに激情する。
「わーーー」
と声を上げたかと思うと、大きな声で泣き始めた。
「お母さんは僕の気持ちなんかわからないんだ。僕がどんな気持ちで学校に行っていたか。僕がどれだけ悔しいか!!!」
ある日、陸君は家を飛び出した。発見できたのは1時間後のことだった。陸くんには陸くんなりの思いがあった。
〝いつも「ドジだ」と自分を馬鹿にする同級生を見返してやるんだ〟
〝僕は勉強ができるってことをみせてやるんだ〟
〝頭が良いと同級生にわかってもらうためには、彼らが名前の分かる中学がいいな。よし、〇〇中学に入ろう〟
陸君はそうして気持ちを奮い立たせるようにして学校に行き、生活してきたのだった。
そこに親の「受験をやめよう」という言葉が、予想外に激しく刺さったのだろう。
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