ピアニスト、指揮者、社長、反田恭平が開く新境地 「クラシック音楽をビジネスとして成功させる」

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JNOでオーケストラの指揮をする反田氏(写真:Kenryou Gu)

――ピアノにとどまらず、活動の幅を広げ続けています。

実は、ピアノを本気で弾いてきたのは、指揮者になるという目標のためでもあったんです。「1つの楽器を極めることが、指揮者への道を広げる」と、子どものときに受けたワークショップで、指揮者の曽我大介さんにアドバイスをいただき、実践してきました。

2018年に弦楽八重奏「MLMダブル・カルテット」をプロデュースし、それが拡大したJNOを2021年に株式会社化、社長に就いた。そこではピアノを弾きながら振る「弾き振り」を含め、指揮に取り組んでいます。

オーケストラを株式会社化したのは、自分たちがやりたいことを実現していくためでもあります。収益を得て、それを次にやりたいことの資金にする。普通の会社では当たり前でしょうが、クラシック音楽の世界では例のないことだったかもしれません。

また、音楽家は不安定な職業です。音楽家が音楽に専念できる環境を整えることも、目標の1つ。JNOのメンバーには社員としてのお給料を支払っています。契約形態も個別に考え、その人に合った活動の仕方を模索します。

コロナ中のライブ配信を音楽家から全否定された

――新たな試みとして、コロナの中で行った有料ライブ配信コンサートも注目を集めました。

2020年4月1日に、有料の無観客オンライン配信演奏会「Hand in hand」を開催しました。クラシック業界はもちろん、エンタメ業界全体でもほぼ最速の企画で、2000枚以上のチケットを売り上げた。

当時、音楽家やコンサートに関わる仕事をする人は苦境にありました。ほぼすべての公演がキャンセルになったのです。しかも、その状況がいつまで続くかわからない。何か手を打たなければ、と不安でたまらなかった。どうすれば仕事を失わずにいられるか、新たなビジネスモデルが必要でした。

ところが、この演奏会の実現が本当に大変でした。

――どんなところが?

まず、お金を取るからには当日視聴できないという事態は許されません。しかし、うまくいくかどうか実験を重ねる時間はなかった。もう少し時間をかけようという意見もあったけれど、相次ぐ仕事のキャンセルに疲弊した演奏家たちのためにスピード感が必要でした。

次の問題は、演奏家が集まると、「密」になって危険なのではないかという懸念。どうすれば感染を防げるかなど、正解のない中で音楽以外のことも本当にいろいろと考えた。最終的にプログラムを少人数編成の曲に絞りました。

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