『リアルな女性をモデルに選び、リアルな使用前、使用後の写真を使いました。それでは商品に高級感が出ない、多くの小売店や専門家たちがそう言いました。でも今では、彼らのほとんどが、リアルな女性を全面に押し出すようになっています』
ジェイミーが成功したのは、全米最大の通販番組QVCに10分出演し、自社のコンシーラーを6000個完売したことがきっかけだ。
テレビ通販のコンサルタントからは、より多くの商品を売るため、「若くより抜きのモデルを使うべきだ」との助言があったが、彼女は次のように話し、聞くことはなかった。『非の打ち所がない美肌の人が、コンシーラーを使う意味ってなんですか?』
ジェイミーは、視聴者が自分の年齢や肌色、肌タイプに商品がマッチすることを確認できるように、リアルなモデルを使って商品を見せたいと思っていた。そこで、ジェイミーは自身がモデルとなり出演することを決めた。
彼女は顔面が赤くなり、吹き出物がでる肌のトラブル(酒さ)を抱えていた。
だからこそ自分のような女性向けの商品を開発したし、テレビショッピングの生放送でも、商品を使用する前のすっぴんの自分の顔と使用後の顔を視聴者に見せることで、リアルさを出すことにしたのだ。
化粧品の再定義を行う
ジェイミーの話から、資生堂が東北の被災地で化粧を通じた支援をしていたことを私は思い出した。
東日本大震災後、津波によって家を流された女性たちは数日間お風呂に入ることができなかったし、当然、化粧をすることもなかった。
資生堂は、日頃は百貨店で化粧の助言を行っているビューティーカウンセラーを東北に派遣。お化粧を被災者に施すと、被災者の顔つきがみるみる変わったという。
化粧によって、ようやく自分たちが生存でき、そして日常を取り戻しつつあることに気づけたからだ。化粧とは外見をよくするだけでなく、自分に自信を持ったり、積極的になるよう心に働きかける効果もあるのである。
ジェイミーは、化粧品がもつ効果を再定義した。若い美人のようになれる、というよりも、あらゆる人たちの心を輝かせるものであると。彼女は、「あなたの中にある自信と目的という光を探してみようという気になってほしい」と本著で繰り返し訴えている。
この逸話は、新しいブランドが誕生するときには、商品カテゴリーの意味と意義が再構築されることを示している。スティーブ・ジョブズが、iPhoneによって電話を再発明したように。
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