「熟練の専門家」より「素人の直感」に従うべき瞬間 業界の常識を変えた「Believe It」の成功3哲学

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アリーナに踏み入れてリスクを取るという話を聞くと、私は2011年を思い出す。

3月に起きた東日本大震災以降、テレビをみてもネットをながめても、東北と復興と原発事故の話題で埋め尽くされていた。しかし、実際に津波で被災した現場に行くと、夜にもなると誰もいなくなるのだ。

その時に感じたのは、「ほとんどの人は観客席(スタンド)で議論していて、現場(アリーナまたはピッチ)には人がほとんど立っていない」という現実だった。

以来、SNSで議論することの意味はほぼないと感じ、とにかく課題の現場で歩き続けようと思い至った。

あれから約10年が経ち、当時東北のことを話題にしていた人は何も語らなくなったが、東北復興に真に情熱を持つ多くの仲間と出会うことができ、今の仕事を続けることができている。

自分の進むべき先を考えるのに最適な書

『あなたは必要なものをすべて備えて生まれてきた。今生における最大の旅路の1つは、自分のためにそれを信じる術を学ぶことだと私は信じている』

自分を信じること。直感に従うこと。リスクをとって人とのつながりを得ること。頭で想像できたとしても、実際に行動に移すことは簡単ではないだろう。

ジェイミーは勇気をもってキャリアを変え、チームをつくり、また業界に信頼できる知人を増やしていった。失敗も少なくなかったが、それらを成功の糧に変えて、前へ進み続けたことが、成功につながっている。

ネット上には情報が無数に増えていて、それゆえにどこに進むべきかがむしろ迷ってしまう人が多いように思う。

そうした中でジェイミーは、スマートフォンとパソコンを閉じ、自分の内側に耳を傾けること。そして近くにいる友人や家族のことを意識することを教えてくれている。

疫病、戦争、そして暗殺と、社会がますます不安になっていくように見える。いま一度自分の立っている場所を見つめ直し、どこに歩んでいくかを考えるうえで、ジェイミーの本は最適な1冊と言えるだろう。

藤沢 烈 社会起業家、一般社団法人RCF代表理事

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ふじさわ れつ / Retz Fujisawa

1975年京都府生まれ。一橋大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て独立し、NPO・社会事業などに特化したコンサルティング会社を経営。東日本大震災後、RCF復興支援チーム(現・一般社団法人RCF)を設立し、情報分析や社会事業創造に取り組む傍ら、復興庁政策調査官も歴任。総務省地域力創造アドバイザー、釜石市地方創生アドバイザーも兼務。復興活動の中で小泉進次郎氏と出会い、小泉小委員会(2020年以降の経済財政構想小委員会)民間オブザーバーに就任。主な著作に『社会のために働く』(講談社)、『人生100年時代の国家戦略』(東洋経済新報社)がある。

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