なおこの「男女間パワーバランス」の急速な変化への反動もあり、韓国内でフェミニズム批判に勤しむ男性も増えてきているのは、東京五輪にショートヘアで参加した女子アーチェリー選手への誹謗中傷に見られたとおりである。
まだ女性が不当な待遇を受けていることもあるとはいえ、この「女性の社会的地位の急上昇」は、出生率の急速な低下と無関係ではないと思われる。
実際に世界を見渡すと、韓国もかつてはそうであったが、子どもが5人も6人も7人も生まれるときは、母親である妻は十分に尊重されない傾向がある。
これに対し、子どもが極端に少なくなると、希少な子どもを産んでくれる妻の交渉力が急速に向上するのだろうか。
「パラサイトマダム」が実際にも増えている?
韓国女性が強くなったのは、20世紀末の「IMFショック」時に旧来の価値観の弊害への反省が進んだこともあるが、ポップカルチャーによって現代女性のベンチマークが非現実的に変わってしまったことも重要な一因であろう。
21世紀初頭の大ヒット映画『猟奇的な彼女』を観て、強い韓国女性像に驚いた人も多いのではないだろうか。
しかしそれから20年経ったいまでは、韓国女性のなかから「猟奇的な彼女」か「猟奇的な奥さん」を見つけるのは、極めて容易だというのが私の実感である。
そして、コロナ蔓延直前期の世界的な大ヒット映画『パラサイト』に出てきた富裕層のマダムのように、家事をまったくせず、韓国人同士の日常会話なのに、たまに英語でしゃべってみたがる「パラサイトマダム」は、私の周りでも増えてきてしまっているように思えてならない。
韓国ドラマの典型的なパターンの1つとして、「ハンサムで背が高く、金持ちで有能で、リビングルームがやたらと大きい家に住む一途な男性が、1人のドジな女性を守ることに一生懸命」みたいなストーリーが人気を得てきた。
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