しかし、結果として女性たちの脳内比較対象が、「ドラマの主人公のような財閥の理事か大統領の息子、少なくとも敏腕弁護士の、富と外見のよさと優しさをすべて兼ね備えた男性(おまけに女性のすべてを理解し赦す)」となりがちだ。その結果、「実在不可能なレベルの期待値」を抱かせるに至っているのではと思えてしまう。
そんな「非現実的な期待値の高さ」が、肉体的には男性向けのマッチョジムの多さ、そして女性向けの整形クリニックの多さ、そして全般的に非現実的な要求水準とプレッシャーの強さにつながっているというのが私の実感である。
私は韓国女性の理想だけではなく、いまさら儒教にハマッて、やたらと夫を大切にしてくれるヒロインのドラマか、男性への期待値を現実レベルに引き下げるドラマの登場を、個人的には期待している。
韓国版「男はつらいよ」、妊婦にひれ伏す男たち
韓国で「女性の地位向上」に伴い、男性へのプレッシャーが大きくなった背景として、ほかにも次の3つの要因が考えられる。
第1に、前述のとおり世界最低の出生率のせいで、子どもを産む女性の交渉力が非常に強くなり、後述するように出産関連費用が極めて高い社会に変わってきた(日本のなかでは高額な山王病院での出産費用が、相対的にかわいらしく思えるくらいだ)。
男性は妊婦に、まるで女王に接するように“かしずく”し、つねに妊婦のエスコートが求められる。
たとえば日本の産婦人科は女性だけが来ていて、男性が付き添ってきていないことに、韓国人女性は驚くのである。
そして「サンフチョリウォン」(産後調理院。産後の妊婦を2週間やもっと長期間休息させる施設)など出産関連の女性向けサービスも極めて充実しているが、ここの費用は2週間で50万円、1カ月100万円超えもザラで、かつ予約をとるのに実に苦労する。
ようやく家に帰ってきたとしても、その後は、かなり高額な家政婦さんを雇う人が非常に多い。
乳児の世話をしてくれるヘルパーさんは、香港やシンガポールのように月700ドルではなく、それこそ月30万円以上、住み込みだと月50万円くらいかかる。これに加え、子どもの学費も世界最高水準だ。
つまり、よほどお金に余裕がなければ、子どもを産んで育てることなど考えられない社会になりつつあるのだ。
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