クラウンを大変身させた豊田社長の強烈な危機感 16代目開発の裏側と第1弾クロスオーバーの全貌

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4車型が用意されていた16代目クラウン。多くの報道陣が度肝を抜かれていた(撮影:尾形文繁)

開発陣は実務に入る前に「クラウンとは何か?」を徹底的に見つめ直した。そこでわかったこととは、クラウンが歴代受け継いできたことは、クルマの形、駆動方式、搭載エンジンといったロジカルな部分ではなく、「もっといいクラウンにしたい」というパッションの部分だったことである。

そこで開発陣が決断したのは「セダン」、そして「日本専用車」からの脱却だった。恐らく、営業部門からは猛烈なクレームが入ったと思うが、ロングセラーだからこそこれまでの固定観念に囚われない変革が必要だったのだろう。

といっても、開発期間は2年である。これまでのトヨタなら間違いなく不可能な時間軸だったが、TNGA、カンパニー制に加えて、モータスポーツを起点としたアジャイル開発といったトヨタのクルマづくり改革をフル活用することでミッションを完了。

そして、生まれたのが、新時代のクラウン……セダン+SUVの発想「クロスオーバー」、エモーショナルなスポーツSUV「スポーツ」、アクティブライフを楽しむ相棒「エステート」、そして正統派サルーン「セダン」の4台だ。

セダンの呪縛が解けたからこその新しいセダン

実は企画当初はクロスオーバーのみの開発だったと言うが、クロスオーバーがある程度カタチになった時期に豊田社長から「セダンも考えてみないか?」という提案があったという。中嶋プレジデントは「正直言うと、耳を疑った」と言うが、同時に「セダンの呪縛が解けた今だからこそ、新たな発想でセダンを作りなさい」という問いかけに聞こえたそうだ。

「それならば、皆が求めるクラウンをもっと提案してみよう。キーワードは『あなたのフラッグシップ』だ」とスポーツとエステートの企画が生まれたそうだ。

ちなみにセダンはほかの3台に対してフロントホイールからAピラーの間隔が異なること、さらにはサイドのプロポーションがFCEVのMIRAIに似ていることなどから、筆者は「プラットフォームが別仕立てでは?」と予想している。さらにスポーツは昨年12月に行われた「バッテリーEV戦略に関する説明会」でお披露目された数多くのBEVモデルの中の1台であることもわかるだろう。

豊田社長はこの4台のクラウンを見て、開発陣に「ちょっと調子に乗りすぎていない? でも、これは面白いね」と。そして、試験車両のステアリングを握って「これぞ、新時代のクラウンだね」と語ったそうだ。つまり、どのモデルも正真正銘「クラウン」なのだが、多様性が求められる時代に合わせられ、単品ではなく「群」としての提案である。この辺りは手法こそ異なるが、考え方はヤリスシリーズ/カローラシリーズと共通である。

次ページ第1弾で投入されるクロスオーバーの詳細を解説
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