中国の新興EV(電気自動車)メーカーの恒大汽車(正式社名は恒大新能源汽車集団)は7月6日、初の市販モデル「恒馳(ヘンチー)5」の販売予約を開始した。実際の納車は2022年10月に始める予定だ。
恒大汽車は深刻な経営危機に陥っている不動産大手、恒大集団(エバーグランデ)の子会社であり、EVの量産や販売を計画どおりに実現できるかに注目が集まっていた。天津市の工場で生産される恒馳5は、2021年12月30日に第1号車のラインオフが発表されており、今回の販売予約開始まで半年余りかかった格好だ。
恒馳5はSUVタイプの小型EVで、上級グレードの希望小売価格は17万9000元(約361万円)。カタログ上の性能や仕様は、同価格帯の競合車種に遜色ないものとなっている。「2023年1~3月期までに1万台を納車したい」。恒大汽車の総裁(社長に相当)を務める劉永灼氏は、販売予約開始の発表会でそう意気込みを語った。
注目すべきなのは、販売予約を始めるにあたって恒大汽車が独特の支払い方法を打ち出したことだ。購入者は、予約時点で支払う前払い金と納車時に支払う残金をすべて天津津濱公証處(公証役場に相当)が管理する専用口座に振り込む。恒馳5は納車後15日以内なら返品が可能であり、その場合は公証處の口座から代金が払い戻されるというものだ。
計画どおりの量産・納車は不透明
なお、クルマを返品する際にはいくつかの条件を満たす必要がある。納車後15日以内は臨時ナンバープレートを使用し、正規の車両登録をしないこと。走行距離が1500キロメートル未満であること。クルマの外観や機能に問題がなく、無事故であること。所有権の移転や抵当、担保の設定をしていないこと、などだ。
親会社の恒大集団は、2021年12月2日時点で恒大汽車の発行済み株式の58.54%を保有している。恒大集団は資金繰りが行き詰まり、いつ経営破綻してもおかしくない苦況が続いているため、恒大汽車に対する市場や消費者の信用も大きな(マイナスの)影響を受けている。同社が公証處の利用という奇策を繰り出したのは、恒馳5の購入希望者の不安を払拭するためにほかならない。
とはいえ、恒馳5が実際にどれだけ販売予約を集めるかは未知数だ。また、仮に多数の予約を獲得できたとしても、恒大汽車が計画どおりに量産・納車できるかは不透明と言わざるをえない。
見方を変えれば、恒馳5の成否は恒大集団が自動車事業参入の悲願を達成できるかだけでなく、グループ全体が経営危機を抜け出せるかどうかのメルクマールになりそうだ。
(財新記者:戚展寧、陳博)
※原文の配信は7月7日
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