中国新興EV「蔚来汽車」に不正会計疑惑が浮上 ショートセラーが指摘、会社は事実無根と反論

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蔚来汽車はEVの車両本体とバッテリーパックを分けて販売する「BaaS」を展開している。写真は同社のバッテリー交換ステーション(蔚来汽車のウェブサイトより)

中国の新興EV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)に不正会計疑惑が浮上した。アメリカの投資会社のグリズリー・リサーチが、6月28日夜に調査レポートを公表。蔚来汽車が非連結の関連会社の蔚能電池資産を利用して、「売り上げと利益を大幅に水増ししている可能性が高い」と指摘したのだ。

グリズリーは、疑わしい銘柄のレポートを出すと同時に空売りをかける「ショートセラー」として知られる。同社によれば、蔚来汽車は次の3つの方法で会計を操作しているという。

第1に、蔚来汽車から蔚能電池資産へのバッテリーパック販売を通じた(実際にはユーザーがまだ購入していない分を含む)売り上げの前倒し計上。第2に、蔚能電池資産に対する実需を上回る数量のバッテリーパックの販売。第3に、バッテリーパックの在庫を蔚能電池資産に持たせることによる減価償却費の付けかえだ。

翌6月29日、蔚来汽車は「レポートの内容は事実無根であり、わが社に関する誤った情報が多数含まれている」と、疑惑を全面否定する声明を発表。同社はレポートの指摘について調査中であり、株主の利益を守るために(グリズリーに対する)適切な措置を検討しているとした。

非連結の関連会社が電池をリース

蔚来汽車は自社製のEVを「電池交換式」に設計し、車両本体とバッテリーパックを分けて販売する「BaaS(バッテリー・アズ・ア・サービス)」と呼ばれるビジネスを展開している。

蔚能電池資産はその中核を担う会社で、蔚来汽車から買い取ったバッテリーパックを顧客にリースしている。BaaSを利用する顧客は、EVの車両本体をバッテリーパック抜きの割安な価格で購入するとともに、バッテリーパックのリース料を蔚能電池資産に支払う仕組みだ。

本記事は「財新」の提供記事です

蔚来汽車と蔚能電池資産はサービスを一体的に提供しており、蔚能電池資産の経営トップは蔚来汽車の役員が兼務する。にもかかわらず、両社は会計上連結されていない。蔚来汽車の2021年の決算報告書によれば、蔚能電池資産に対する出資比率は約19.8%にとどまる。

グリズリーのレポートを受けて、香港証券取引所に上場している蔚来汽車の株価は急落。6月29日の終値は前日の11.36%安の165.5香港ドル(約2865円)で引けた。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は6月29日

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