3月10日、アメリカの株式市場に上場する中国系銘柄が一斉に急落した。中国系企業のADR(アメリカ預託証券)の値動きを示すナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は、この日だけで10%も下落。個別銘柄では、中国の電子商取引(EC)大手の拼多多(ピンドゥオドゥオ)が17.5%、同じく京東(JDドットコム)が15.8%、EC最大手の阿里巴巴(アリババ)が7.9%値下がりした。
株価急落のきっかけは、アメリカ証券取引委員会(SEC)が「外国企業説明責任法」に抵触する上場企業の暫定リストに、3月8日付で中国系の5社を指定したのが明らかになったことだ。具体的な社名は、外食チェーン大手の百勝中国(ヤム・チャイナ)、バイオ医薬の百済神州(ベイジーン)、同じく再鼎医薬(ザイ・ラボ)、漢方薬大手の和黄医薬(ハチメッド・チャイナ)、半導体設備の盛美半導体(ACMリサーチ)である。
リストに指定されたのは5社だけなのに、なぜ中国系銘柄全体に売りが殺到したのか。「アメリカの機関投資家には厳格な行動規範があるためだ。なかでも年金基金は『プルーデントマンルール』を順守しなければならない」と、ある投資銀行の関係者は説明する。
プルーデントマンルールとは、年金基金の運用関係者に対して専門知識を活かした思慮深い投資行動をとることを義務付けるもので、「思慮深い投資家の原則」とも呼ばれる。言い換えれば、アメリカの法律に抵触して上場廃止のリスクがある銘柄に投資を続けることは、思慮深いとは見なされないのだ。
ほとんどの中国銘柄に上場廃止リスク
外国企業説明責任法は、アメリカの証券市場に上場する外国企業の監督強化を目的にした法律で、2020年12月に成立した。アメリカに上場する外国企業が、同法およびその細則が定める要件を満たしていないと認定された場合、その企業は前出の暫定リストに指定される。その後、15日間の異議申し立ての猶予を経て、次は正式リストに組み入れられる。
リストに指定される典型事例は、その企業が外国政府に所有または支配されていないことを証明できなかったり、その企業の監査法人が公開会社会計監査委員会(PCAOB、アメリカの上場企業の監査法人を監督する機関)の検査を受け入れなかったりするケースだ。そして3年連続でリストに指定された場合、その企業の株式は取引を禁じられ、上場廃止になる。
今回、暫定リストに指定された5社は、いずれも(2021年の)年次報告書をSECに提出したばかりのタイミングだった。
「このことは、年次報告書をこれから提出する中国銘柄のほとんどが、暫定リストに指定される可能性が高いことを示唆している」。前出の投資銀行関係者は、プルーデントマンルールに基づく年金基金の手仕舞いが中国銘柄全体に広がった背景を、そう解説した。
(財新記者:岳躍)
※原文の配信は3月11日
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