ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、世界の資本市場でリスク回避のムードが高まっている。そんななか、外国の機関投資家による中国の人民元建て債券の保有残高が3年ぶりの減少に転じたことがわかった。
中国本土の銀行間債券市場の証券決済機関である中央国債登記結算(CCDC)のデータによれば、2022年2月末時点で外国の機関投資家が預託している中国債券の残高は3兆6665億元(約67兆2924億円)と、1月末より約670億元(約1兆2297億円)減った。外国の機関投資家の持ち高が前月比で減少したのは、2018年11月以降で初めてだ。
(訳注:CCDCのデータには国債、地方政府債、政策性銀行債、格付けが最高ランクの大企業の社債などが含まれている)
その背景について、スタンダードチャータード銀行で中国のマクロ経済担当のチーフストラテジストを務める劉潔氏は、次のように説明する。
「中国の国債は2月に規模の大きい償還があり、純発行残高が2100億元(3兆8542億円)減少した。それに伴い、国内外の機関投資家の国債保有残高が一時的に減った影響が大きい」
人民元とドルの金利差の縮小で、グローバルな資産運用会社の一部は中国債券への投資姿勢を「買い入れ」から「中立」に変更した。しかし劉氏によれば、中国から大量かつ持続的な資本流出が起きる兆候はないという。
対ロシア制裁の波乱が及ぶリスクも
「世界の資本市場でボラティリティが高まるなか、人民元の対ドルおよび対主要通貨バスケットの為替レートは強含みで推移している。このことは、人民元が(相対的な)安全資産と見なされている表れだ」(劉氏)
スイスの金融大手UBSの中国地区チーフエコノミストを務める汪濤氏も、外国の機関投資家による中国債券の売り越しは一時的な動きと見る。
「各国の機関投資家は、中国の国債に代表される人民元建て資産への投資を長期的に続けている。このトレンドに明確な変化は見られない」。汪氏は財新記者の取材に対してそうコメントした。
そんななか、ある中国の私募債券ファンドの関係者は次のように語り、外国人投資家の動きによる中国債券市場の波乱に警鐘を鳴らした。
「ロシアの債券を最近買い入れたファンドは(西側諸国の対ロシア制裁の影響によるルーブル暴落などで)困難な対応を迫られている。ロシアの債券を売却できる市場はもはやどこにもない。そこでやむをえず、中国の債券など相対的に流動性が高い資産を投げ売りする可能性がある」
(財新記者:王石玉)
※原文の配信は3月11日
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