頭のいい人が実践する「情報」の絶妙なさばき方 関心や問題意識なければ頭に残らず評価できない

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『ハーバード・ビジネス・レビュー』の前編集長の岩佐文夫さんが以前フェイスブックの中で、非常に興味深いことを書いていました。

それは、どう考えるかではなくて、それ以前の情報のインプットの質が良いかどうかが大事ではないかという趣旨の内容で、私はこの意見は正しいと思っています。いくら考えたとしても、もともとのインプットの質が悪ければ、良いアウトプットは出ないと思うからです。

良い網を張っていると良い情報が引っかかる

では、どうしたら質の良いインプットができるのでしょうか。

それには、頭の中に良い網を張ることだと思うのです。良い網を張っていると、良い情報が引っかかるのです。かなりの部分、その網の張り方で決まってくるのではないでしょうか。

岩佐さんの書き込みが私の頭に引っかかったのも、ある意味では、私が網を張っていた結果といえます。実は、「頭の中にぼんやりした網を張っていると、関連した情報が頭の網に引っかかる」という発想も、岩佐さんの書き込みがヒントになりました。

私が知りたいと思っていた関心事に対して、岩佐さんの書き込みに直接の答えが書いてあったわけではないのですが、ほとんどの情報が頭の中を素通りしていく中で、私がピンと来るものがあったので引っかかったわけなのです。

情報が引っかかって網とくっついたことで、そこにアイデアが生まれました。それと同時に、また違う網が少し広がったという印象です。

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このときの網の様子をイメージ化してみると、海中で養殖の海苔ができていく過程を考えるといいかもしれません。もともとは、目の粗い網を張っているのですが、海水が流れてくると海苔が少しずつそこにくっついていきます。そうして、だんだんと網の目を海苔が覆うほどにペタペタとついていき、面ができあがっていく感じです。

そのように積み重なった情報が、その人にとっての「思考の骨組み」になっていくのです。

今のような情報過多の時代には、すべての情報をつかまえることはできませんし、かといってすべての情報を見過ごすことはできません。そうなると、あらかじめ頭の中に網を張って情報を流していくというやり方がいいと思うのです。

そうやって、頭の中に残る情報を取捨選択していきます。そして、取捨選択した中で良い組み合わせをつくっていけるかどうか、それが独創的なアイデアや考えにつながり、その後のその人の発展を決めていく要素になると思うのです。

前回:頭のいい人と平凡な人で違う「頭の使い方」の差(5月8日配信)

柳川 範之 東京大学経済学部教授

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やながわ のりゆき / Noriyuki Yanagawa

1963年生まれ。東京大学経済学部教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。現在は契約理論や金融関連の研究を行うかたわら、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。主な著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『契約と組織の経済学』(東洋経済新報社)など。

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