「たった1日の育休」を取った銀行員の複雑な胸中 育休取得男性の約3割が5日未満という衝撃事実

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たとえば育休をきっかけに業務の棚卸しや引き継ぎが積極的に行われれば、業務の属人化を解消できる。近年では働き方改革の推進や生産性の向上、人材育成に着実につなげている企業も出てきた。また、社員が仕事と家庭を両立しながら、長く安心して働けるイメージを持てれば、離職防止や従業員満足度の向上につながり、ひいては企業イメージ、採用力のアップなども期待できる。

入社後に「すぐ育休」前提で採用

男性の育休を「採用戦略や社員の長期活躍といった“経営戦略”の一環」と捉えて推進しているのが、契約審査プラットフォームなどを企画開発するLegalForceだ。

これまで男性の育休取得実績はなかったが、今年、育休取得を希望する男性ITエンジニア(松本翔さん・30代)を採用するために、育休に関する社内規則を改定した。同社開発部部長の深川真一郎さんは、こう語る。

「当社は2017年設立の若い会社で、たまたまお子さんが生まれるタイミングにある男性社員がいませんでした。ゆえに社内規則も他社にならって『一定期間在籍した社員のみ育休を取得できる』制度になっていたのです」

「ただ、今回私たちが採用したいと考えた松本さんは、入社前から『もうすぐ子どもが生まれるので、育休を取りたい』という意思が明確でした。それなら、私たちとしても勤務期間にこだわる必要はないと、松本さんの入社に合わせて社内規則を整えたんです」

この背景にはITエンジニアの採用事情もある。パーソルキャリアが運営する転職情報サイト「doda」によると、IT技術職の毎月の新規求人倍率は2021年12月に初めて10倍を超えた。これは全職種において、突出して高い数値だ。ITエンジニアを必要とする企業数が、仕事を求める求職者数を大きく上回っており、人材の争奪戦が激しくなっていることを意味している。

「企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速していることもあり、エンジニア採用はますます厳しくなっています。ハイプレイヤーになればなるほど、数十社を超える企業からつねにオファーがある世界です。男性の育休を含め、働きやすい環境を整備しなければ、採用の土俵にもあがれません」(深川さん)

実際に、ITエンジニアとして入社した松本さんのまわりには、育休を取得している男性が珍しくないという。

「IT系の企業に勤めている友人は、男性でも育休を取得している人が多い。パッと思いつくだけでも5~6人はいますよ。だから僕にとっては、そこまで特別なことではなくて。入社後すぐにお休みをいただく心苦しさはありましたが、事前に正直にお話しして、承知していただけるなら、お言葉に甘えようと」

結局松本さんは、11月に入社して翌年の3月から5月まで約2カ月間の育休を取得した。

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