「たった1日の育休」を取った銀行員の複雑な胸中 育休取得男性の約3割が5日未満という衝撃事実

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もっとも、松本さんの職場のように柔軟に対応ができるところばかりではない。東京都産業労働局が発表した、「令和2年度 東京都男女雇用平等参画状況調査」によると、男性の育休取得にあたっての課題は、事業所・従業員ともに「代替要員の確保が困難」の割合(事業所67.2%/男性60.3%、女性57.3%)が最も高い結果となっている。

女性よりも休む期間が短くなりがちな男性の育休。数週間~数カ月という短い期間の代替人材を採用することが難しいため、既存社員への負担が大きくなるという声もしばしば聞かれる。

同社の場合は、人が抜けた穴をどう埋めたのか。上司である深川さんに聞くと、リスクマネジメントの観点から人材配置や育成を捉えていることがわかった。

「育休の場合は、休む時期が事前にわかっていますから、計画的に準備を進められます。育休の直前には引き継ぎのタスクが多くなる業務は振らない。彼の業務を一緒に整理して優先順位をつけ、復職するまで一時的にストップする業務を決めるなどの意思決定をしました」

「また、当社のリーダーやマネジャーは、社員に何かあった際に“現場に入る”役割を担っています。育休に関しても例外ではなく、2カ月ほどの短期間であれば、リーダーやマネジャーが代行します。

育休に限らず、たとえばコロナに感染して2週間~1カ月程度休んだり、事故にあって入院したりというリスクはつねにあります。1人2人抜けたとしても、現場が混乱せずに、きちんと機能する。そんな状態をつくることも管理職の職責の1つだと、当社では考えられているんです」

内定を得る前にトップに「育休」を直談判

2020年8月、BtoBマーケティングのコンサルティング事業などを手がける才流に転職で入社した松下雅征さん(入社当時20代)も、内定前の代表との面談で“育休取得の希望”を申し出た。

「もともと子どもが好きで、自分に子どもが生まれたらちゃんと子育てをしたいと思っていました。一方、仕事も好きで、これからも仕事に邁進していきたい気持ちもあります。ただ、人生という長いスパンで考えたときに、子どもが生まれるというのは、そう何度も経験できることではありません。産後のほんの数カ月、100%子育てに時間を割いてみたいと思い、内定をもらう前に、相談したんです」(松下さん)

松下さんは才流にとって初の育休取得者。社労士と相談し、「育児休業申請書」の雛型をつくるところから始めた。今後、社内で育休取得者が出てくることを想定し、育休取得にかかわるメソッドが蓄積されるように、「よかったこと/やりづらかったこと/今後の改善提案」などを記載する振り返りシートも作成した。時短勤務についても、これまで制度としてなかったため、代表と相談し、ルールづくりを行ったという。

松下さんは、転職後すぐにスムーズに育休を取得できた要因として、“トップと職場の理解”を挙げる。

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