東洋医学の知恵で猛暑の夏を涼やかに過ごすワザ 汗のかき方と水分の摂り方が一番のポイント

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毎年、熱中症による死亡事故が報道されていますが、40℃近い炎天下では、外出すること自体がリスクです。実際、日中に30分ほど庭の草取りをしていて熱中症気味になった人もいます。買い物などは朝や夕方の涼しい時間帯にすませましょう。

室内の熱中症は、エアコンの間違った使い方も一つの要因と思われます。乾いた手で脇の下や背中を触り、ベタっとする感じがあれば体が熱を持っている証拠なので、エアコンの設定温度を下げましょう。

高齢者や健康志向が強い方のなかには、エアコンをできるだけ使わないという方もいますが、漢方的な見地からしてもそれは大変危険なことです。漢方の考え方では、たくさんの汗とともに毛穴から「気」が漏れると、夏ばてにつながります。気は生命力のおおもとですので、漏れ出るのはよくありません。

風呂上がりのビールやアイスはNG!

室内の過ごし方だけでなく、入浴の仕方でも気を消耗します。

冬と同じ設定湯温(40℃ぐらい)で入浴する人がいます。風呂から上がって大量の汗をかいているときに、冷たいビールやジュースを飲んだり、アイスを食べたりするのは爽快ですが、これは漢方的にはNGです。大量の汗から気が漏れるだけでなく、冷たい飲食で気を作り出す胃を冷やしてしまうからです。

夏の入浴はぬるま湯で、汗が出ない程度にとどめるのがベスト。36~38℃の湯に10分程度半身浴した後、最後に全身浴をします。この入浴法なら、大量の汗をかかずに冷えがちな下半身を適度に温めてくれます。

誤った養生で心に問題が生じたケースを紹介します。著者が営む薬局に来院した大学生の男性(19)のケースです。

その男性は周りの人に半身浴(42℃で1時間)を勧められ、熱心に実践していました。冬は調子がよかったのですが、気温が高くなり始めると顔が真っ赤にほてるように。それでも頑張って半身浴を続けていると、今度はイライラが止まらなくなり、些細なことにもキレ始めたのです。ついには家の中のものを投げつけるようになったため、心配した母親とともに薬局に相談に来られました。

男性には、高温で長時間にわたる半身浴は止めるように言い、入浴はシャワーのみにしてもらいました。そして、熱を冷ます作用のある漢方薬、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を処方しました。すると、その日からイライラが改善され、2週間ほどで症状が完全に消失したのです。

前述しましたが、イライラは心に熱がこもって限界に達したときに出てくる症状です。この男性は間違った入浴法が原因でしたが、夏の暑さが原因になることもあります。そのようなときはがまんせず、次ページのような養生を実践してみましょう。

次ページ夏の漢方的養生3つ
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