「SPY×FAMILY」がここまで人気を呼ぶ納得の訳 キャラの魅力、絶妙なストーリー、笑い、そして感動

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『SPY×FAMILY』の世界観は、カラッとしているようで意外と切実だ。冷戦時代のドイツを思わせる国が舞台で、そこに『007』的なイギリススパイのオマージュがミックスされている。

東西冷戦というのは、もはや現代においてリアリティーを感じられないかもしれないが、中国や北朝鮮、最近ではロシアなど、いわゆる共産主義圏のような世界観はどこか背筋を凍らせるものがある。そんなジメッとした社会を舞台に、ロイド、ヨル、アーニャもそれぞれに闇を抱えている。

ロイドは、いつも迷いがなく理路整然としているが、時に見せる憂いのようなものがある。それは彼の生い立ちから来ている。実は戦争で家族を失った経験があり、「争いのない世界をつくる」ということが彼の信念なのだ。

ヨルにしても、結婚が遅いことを同僚にもからかわれており、どこか居場所がないように描かれている。殺し屋になったのも、弟を育てるため、汚れた世界を綺麗にすることで弟が生きやすい世の中になると彼女は信じている。

アーニャは人体実験によって超能力を目覚めさせられたが、身寄りがなく孤独だ。孤児院や里親を転々としながら生きてきたと描かれており、能力のせいでむしろ苦労してきたことが伺える。

3人に共通する「孤独」

3人に共通しているのは「孤独」だろう。心のどこかで家族を欲しており、私たちは、そんな気持ちを感じながら、3人の距離が近くなるのを見守っていくのだ。

最初はロイドとアーニャが無事に2人で暮らし始める様子を見守る。そして次はロイドとヨルのラブストーリーに期待する。実は惹かれあっているのに、なかなか進まない関係には目が離せない。

象徴的なのは、ヨルの弟ユーリが家を訪ねて、キスしてみろと言われてドキドキする2人のシーン。まるで高校生の初恋を見ているような赤面っぷりや、お互いに惹かれている様子にキュンキュンするのだ。

また、そんな2人をアーニャが絶妙にアシストする瞬間も見ていて楽しい。アーニャが、「父と母なかよし」と言うと、それだけで幸せになれる。

こんな風に、心の奥に切実さを抱えた3人は、自然と応援したくなる。その寂しさや秘密には、どこか現代を生きるわれわれにも通じるところがあるから不思議だ。そんな自分も含めて、3人に幸せな家族になってほしいと心から願い、惹きつけられるのだ。

たちばな やすひと プロデューサー

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Yasuhito Tachibana

1975年愛知県生まれ。東京大学理学部卒。有線ブロードネットワークス(現、USEN)、TBSグループの制作プロダクションであるドリマックス・テレビジョン(TBSスパークルに吸収合併)を経て2018年独立。プロデュースしたドラマは、『全裸監督』(Netflix)、『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』(テレビ東京)、『マリオ~AIのゆくえ~』(NHK BS)など。

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