「SPY×FAMILY」がここまで人気を呼ぶ納得の訳 キャラの魅力、絶妙なストーリー、笑い、そして感動
その意味では、ロイド、ヨル、アーニャは、スパイとして、殺し屋として、超能力者として、極めて高い能力を備えていて、期待値が非常に高い。しかも、その期待に気持ちよく応えて、毎話3人が活躍するシーンがあるから魅力が高まっていくのだ。
例えば、そうやって3人の高い能力が炸裂して、敵キャラをやっつけるシーンなんかは、やはり見ていて気持ちがいい。とくに、眠れる獅子的なヨルが暗殺者としての顔をのぞかせ、ギラリと目を輝かせる瞬間は、思わず「きた〜」と言いたくなる。この辺りは『鬼滅の刃』の我妻善逸(あがつまぜんいつ)に通じるものがある。
またキャラクターの魅力は、長所だけではなく短所から生まれることもある。短所がチャーミングで愛着が湧いたり、その短所を克服しようとしていたりする場合などだ。
ロイドは、基本クールなキャラ設定だが、例えば、勉強がままならないアーニャを施設に返そうかなど、時々ドライな考えを持ったりする。そのたびにアーニャはゾッとさせられるわけだが、そんな黄昏がいつにもなく熱くなったり、親として夫として変わっていったりする姿は見ていてほほ笑ましい。
アーニャの場合は、落ちこぼれ生徒なので、学校でちょっと活躍するとそれだけでうれしくなる。ヨルに関しても、酒癖の悪さといえば普通は好きになれない要素だが、それがコメディーシーンとして描かれるので、結果、彼女の魅力に貢献している。
目的と障害が明快だから惹きつけられる
『SPY×FAMILY』のストーリー的な魅力は、なんといっても「目的」と「障害」が明快なことだ。
一般的に、物語を見ていていちばんストレスを感じるのは、何に期待していいのかわからないときだ。人は何に期待していいかわからない時間が続くと気持ちが離れる。惹きつけられる物語というのは、つねに何に期待していいかが明確で、そのために必要なのが「目的」と「障害」だ。
「目的」があることで、その目的が達成される期待が高まる。「障害」が立ち塞がることで、それを乗り越えることに期待する気持ちが生まれる。結果、目的が達成されたり、障害が乗り越えられると、満足したり感動したりするのだ。
『SPY×FAMILY』はこの目的と障害の作り方が、名人芸というくらい巧みだ。それはいわゆる「ベタ」と呼ばれるような設定だったり、展開だったりだが、それを徹底的にやり切るところに、原作者(とアニメチーム)のプロフェッショナルさが感じられる。
「受験に合格しなければいけない」「星を集めて特待生にならないといけない」「次男と仲良くならなければいけない」「弟に偽装家族と見破られてはいけない」など、目的がつねにはっきりしていて、何に期待して見ればいいかが明確なのだ。
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